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社員の半分が20代以下 地方の建設会社になぜ若手?【前編】

2022年05月25日

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岩手県のある建設会社、従業員は185人ですが、なんと半数が20代以下。地方の中小企業の新卒採用、決して簡単ではないはずですが、なぜこれだけ若手を集められているのか。就活生が社長に直撃しました。

“田舎”をアップデートしたい

学生

若い人をたくさん採用しているというのは、どんなねらいがあるんですか?

若い人に夢を持って、キラキラしてもらいたいんです。

小田島
社長

岩手って田舎でさ、やる気あるやつから東京に行っちゃうんだけど、そんな田舎をアップデートしたい。

東京に負けない新しい価値観を受け入れるような、かっこいい田舎をつくるために若い人をいっぱい入れてるんです。

小田島組
岩手県北上市にある建設会社。1970年創業で社長の小田島直樹さんは2代目。従業員185人のうち、10代と20代の社員が94人(2022年4月)。公共事業や復興工事で業績を伸ばし、働き方改革でも注目を集めています。

そもそも、どうやって若い人にアプローチしているんですか。

25歳以下の人向けにYouTubeの広告をいっぱい出してる。

だから岩手の中では、中学生、高校生、大学生にはすごい認知度なんだよ。

学生
田嶋

へー!

TikTokもやってて、どれも小田島直樹って検索してくれれば出てくるよ。

TikTokもですか!

小田島社長のTikTok 若手社員と一緒に制作

若い社員から「直樹さん痛い」とか言われてるけど、分かってやってるんだって。

踊ったりしてるんですか?

いや、会話、会話(笑)

「社長調子どうですか?」みたいな、そういう感じでやってるんだけど、“つかみ”だよね。

興味を持ってもらって、「この人何だ?」ってホームページ見てもらって、会社説明会に誘導する。

すると、一定数は面白がった人が残るじゃん。

小田島組 最近の新卒採用人数
2018年 15人
2019年 12人
2020年 20人
2021年 19人
2022年 22人

何をやるかではなく“誰と”やるか

そうすると、建設業をやりたい若者を集めているわけではないんですか。

建設業は手段。目的じゃないんだよね。

たまたま父親が建設やってたからで、今はいろんなIT関連の仕事もやってるんですよ。

除雪など岩手県の公共事業を担う

皆さんが思ってるような建設業の仕事やってる人ばかりじゃない。

実は社員も建設業なんてほとんど分からずに入ってる。

えー!

でもそうすると、ミスマッチみたいなことが起こったりしないんですか?

うーん、好きなスポーツと嫌いなスポーツってある?

サッカーをずっとしていました。

苦手なのは、強いて言えば野球ですかね。

すごく好きな人と野球やるのと、大嫌いな人とサッカーするのどっちが続く?

好きな人とやるほうですかね。

そう、だったら野球でしょ。

仕事も一緒で、大事なのは「誰とやるか」

「何をやるか」じゃないんだよ。

なるほど。

だから「好きな仕事」じゃなくて、「好きな人と働ける場所」を探さなきゃいけない

じゃあ、やりたいことは入ってから探せばいいということですか。

そう、だから入社してからいろんな体験をさせている。

現場だったり、ITだったり、採用、総務、経理、いろんな仕事を経験してもらうんです。

たしかに、やりたいことが決まりきらずに就活をしている人もいますよね。

だから、ここならやりたいこと、夢を見つけられると思う会社に入ってほしい。

現場で働く若手社員

うちは今まで勉強してこなかったけど10年後に同級生で一番の給料になりたいとか、何か面白いこと見つけてやってみたいとかそういう人に来てほしい。

人並みのことができればいいって人は、うち来てもつまんないよって。

どんどん失敗、変化できることが強さ

たくさん増えた若手社員にどうやって成長の機会をつくるんですか。

成長するには失敗するのが重要なんです。

例えばある島で宝探しをするとして、島をABCDって分ける。

Aに行ってダメだったって失敗すれば、残りはBかCかDに絞れて、さらにBでダメならCかD。

つまり失敗をしないと、成長しないんだよね。

なるほど、そういうことですね。

だから、どうやって失敗させるかが大事。

失敗はよくないっていう価値観を植え付けられてるかもしれないけど、うちは「早く失敗しろ」って言っているんだよ。

失敗がいけないなら、結局何もしないほうがいいってなっちゃう

そうですよね・・・

そういうマインドセットを変化させることもすごく大事だよね。

結果的に、若い人が増えたことで会社の競争力というのは上がったんですか。

会社の売り上げは5年前より3割伸びた。

若い人の存在や変化に対応する力が大事。

いまの時代、固定された会社より変化できる会社の方が強いんだよ。

会社を若い価値観にシフトする

変化ですね。

そう、変化できることが一番の強み。

今の日本の人口構造だと、若い人の相対的な価値は高くなっている

若い人をこれだけ確保できているんだから、会社も相対的に強くなれるよね。

若い人を集めるための働き方の工夫を教えてください。

こっちが若者の考えにシフトする、年配の論理を押し付けないことかな。

年配のほうが役職は偉いけど、価値観はこれから50年働く社員に合わせないといけない。

どんな働き方ですか。

マイカーで通勤していたところをバスや電車にしたら、それも就業時間にする。

すると、移動時間もみんな仕事時間なわけ。

会社の乗り合いの車の中で通勤しながらメールをチェック

通勤時間も勤務時間に
電車やバス、相乗りの車での通勤を勤務とする。その間にタブレットやスマートフォンでメールの返信、書類の整理ができるように。従来よりも自由に使える時間が増え、子どもの迎えの時間を確保できるようになった社員も。

小田島組の通勤改革、こちらのNHKの特集記事でも詳しく取材しています↓
「ビジネス特集 通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社」

ほかにも社内の工夫ってありますか?

同じTシャツを着て、音楽かけて仕事してたりしてるよ。

座席はくじ引き
固定の座席を廃止し、毎日くじ引きで席を決定。誰にでも相談しやすい環境をつくることがねらい。若手社員の隣に小田島社長が座ることも。

飲み会は“おごり”
社長参加の夜の飲み会は半額、昼のランチ会は全額を会社が負担。社長は「1時間で帰って、絶対に二次会には行かない」そう。

要は「まじめ風」にやることが目的なのか、仕事をすることが目的なのかということ。

どこかで働くってことは苦痛の対価だって思っていませんか?

がまんしろとか、しょうがないとかいって、痛みに耐えた分が仕事みたいな。

確かにそうですね・・・

そこからの脱却だよ。

うんうん。

好きな時間に仕事して成果が上がればいいわけで、ハワイでワーケーションしたっていい。

そのほうが人間らしいよね。

なるほど、一方で若手がたくさん増えると、逆に頼れるベテランが少ないっていうことにもなるのでは・・・

そのあたりはどうするんですか?

昔は手を取って教えてたけど、それは道具がなかったから。

自分だったら何か分からない時どうする?人に聞く?それとも・・・

スマホとかで調べます。

そう、若い人は調べるっていう能力が年配の人よりもはるかにあるんだよ。

だから、こっちが調べたら分かる環境にしとけばいい。

例えば社内のルールだったら、“社内wiki”みたいなものを作って調べられる状態にしとけば教える必要ないじゃん。

あー、なるほど。

若い人は「直樹さんすぐ怒るから聞きにくいけど、動画だったら見やすい」っていうんだよね。

正直、そうしないと教えるほうも大変なんだよ。

30代の社員たちが、「また新卒が20人も入ってくるんですか」って泣きそうになってるからね。

そうなんですか!

いい悪いじゃなくて、時代が変わってきている。

来年はメタバースの中に建物を建てて、アバターで面接する採用試験をしたいなって思ってるくらいだよ。

地方の企業だからこそ変化できる

地方の企業だからこそ、アピールできるところってありますか?

やっぱり、変化できること。

きょう話したようなことを都会の大企業でやろう思ったら大変じゃん。

中小企業で岩手だから逆にやりやすい。

たしかに。

思い切ったことができる、変われるってところを岩手で見せていきたい

ちなみに、小田島さんはどうしてそういう考えになったんですか。

特にこの10年かな、会社の規模がある程度大きくなってきた時に、自分の人生の残りのことをすごく意識したんです。

公共事業、岩手県民の税金で食ってきたわけで、やっぱり岩手県民に何か恩返ししたいなと。

みんなに夢とか希望を持たせることができたら最高の人生だなって思ってるんです。

就活生にメッセージをいただけますか。

仕事は苦痛の対価ではないです。

仕事をすることで唯一無二のあなたになれるような、そんな会社に入ってほしいなと思ってます。

すぐには芽が出ないかもしれないけど「どうやったら食えるか」っていう基準じゃなくて、「どうやったら唯一の自分らしさを発揮できるか」。

そんな会社を選んで、輝いてくれればうれしいな。

【後編】では小田島組の入社2年目の若手に、実際、地元で働くってどうなのか?率直な思いを聞きました、近日掲載します。

編集:加藤陽平 撮影:芹川美侑

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