2022年05月18日
就活生のインターンシップ。「参加すると選考で優遇があるのでは?」とも言われていますが、今後“正式に”採用活動に使われるかもしれない。そんな動きがあります。
気になるけど、ちょっとわかりづらいこのニュース。詳しく解説します。
4月、経団連と大学の関係者でつくる採用の在り方を議論する協議会が開かれました。
そこでまとまった報告書では「インターンシップについて一定期間、学生が実際に職業を体験することなどを条件に、企業の採用活動に活用できるようにすべき」とされています。
いつ、どんな形で行われるインターンが対象になるのでしょう?報告書の中身を詳しく見てみると・・・
対象となるインターンは最低でも「5日間以上」実施されるものです。
ただ、条件はそれだけではありません。まずはこちらの図をご覧ください。
1日限定で実施されるものは「オープン・カンパニー」というタイプに分類され「インターンシップには該当しない」と定義されました。あくまで企業や仕事を知る機会だとして、採用活動に使うことは認められていません。
次の「キャリア教育」という分類。「オープンカンパニー」より長い期間で実施されるものの、あくまでも参加者の教育が目的で就業体験は「任意」。こちらもインターンとはみなされず、採用には使えません。
違いが分かるような分からないような・・・でも、重要なのは次です。
「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」。
こちらは、「インターンシップ」と位置づけられ、採用に活用することもできるとしました。
どういうものが対象なのか、見ていきます。
一般的なプログラムなら最低でも5日間以上、専門性を重視するなら2週間以上の期間実施されるものが対象です。
そして、こちらでは「就業体験」が必ず行われます。
就業体験は実施期間のうち半分を超える日数、職場で行うとしていて、事務所や工場、研究所などに学生が同行して体験することが必要です。
ただし、テレワークを日常的に使っている企業ならテレワークも可としています。
条件はさらにあります。
就業体験の際は人事担当者ではなく「その職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後にフィードバック」すること。
そして「学業との両立に配慮する」ことを理由に対象は学部3・4年生か修士1・2年生。期間は夏休みや冬休みなどの長期休暇に行うこととしています。
なんだか、かなり細かい・・・とはいえ大切なので、図でまとめます。
ちなみに、「高度専門型インターンシップ」は大学院生を対象とした、より専門的なインターンシップを想定しているそう。採用に活用するための条件は基本的に上記と同じです。
そして、気になるのは、いつからこの仕組みが使われるのか、ということ。
想定されているのは来年、2023年4月から。つまり、主に25年卒、今の大学2年生からが対象になりそうです。
ただ、気をつけたいのは、この新たな位置づけが広がると「インターン」が一段と狭き門になる可能性もあること。
採用に使えるインターンが最低でも「5日間以上」かつ「就業体験を伴う」となれば、企業にとっての負担感は決して小さくありません。
実際に多くの回数、大人数を対象に実施できるかというと難しいかもしれません。
しかし、就活生としてはやはり“正式に採用につながる”インターンに参加したいと考えるもの。
現状でも企業や就活生の間では、「人気企業のインターンの選考は、実際の採用選考より倍率が高い」という声もありますが、一段と熱を帯びかねません。
報告書をまとめた協議会もこの点は注意を呼びかけています。
協議会 事務局
「インターンシップを経て採用選考に進む人は、実際はそれほど多くの割合にはならないはずです。そうではない通常の選考プロセスがまず前提になるので、学生には『インターンに参加できないと、採用されない』とは思わないでほしいです」
今回の報告書について複数の専門家に取材した結果、以下のようなことが就活生へのアドバイスとしてあがってきました。
・従来多かった1日だけ実施するタイプも決して減らないとみられる。そこで企業を知るのも大切。
・採用に使えるインターンは長期間実施されるため、たくさんの企業で参加するのは難しい。
・限られた機会をいかすためには、事前にある程度の志望度や企業への理解を持っておいたほうがいい。
新たなインターンの対象になるとみられるのは今の大学2年生以降。
まだ早い話とも思えますが、3年生になったらほんの3か月ほどで採用につながるインターンの機会がやってくるので、自分がどんな業界や企業に興味があるのか考え始めてもいいかもしれません。
さて、ここまで詳しく解説してきましたが、企業はすでにインターンを採用活動に使ってなかったっけ?という疑問が・・・
もともと、政府は「インターンシップで取得した情報は採用選考活動に使用できない」という見解。
とすると、現在のように3年生の夏休みのころからインターンに参加し、そこからいわゆる「早期選考」に進むということは認められてはいないはず。
ところが、実態としては参加者を限定した説明会に招待されたり、さらに別のインターンに進んだりと、選考で「優遇」されるケースがあるのは事実です。
だからこそ、就活生がインターンを重視する姿勢は年々、強まっています。
インターンを実施している企業のうち、参加者に対して「何らかの優遇策を講じる」と答えた割合が7割に上ったという調査結果もあります。
とすると、今回の報告書のような仕組みが実現しても、実態は大きく変わらないのでは?
結局インターンはどうなるのか?リクナビの吉田編集長に話を聞きました。
リクナビ 吉田純子 編集長
「現状、採用を意識したインターンシップが開かれていることもあります。また、今回の報告書の仕組みは拘束力があるわけではなく、今後全ての企業がそのとおりに動くとは言えません。学生にとってインターンをめぐる環境が大きく変わるかはまだ分かりません。これまでと変わらず、企業や自分の仕事への興味を見極める機会としても大切にしてほしいです」
取材・構成:加藤陽平
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