2022年03月31日
早期化・長期化・過密化。これが23年卒の就活を表す3つのキーワードだそうです。
リクルート就職みらい研究所の増本全所長に、今年の採用プロセスの傾向を聞きました。落ち着いて就活を乗り切れるよう、しっかり対策をして備えましょう。
(聞き手:田嶋瑞貴 本間遥)
学生
本間
今年の採用スケジュールにはどんな傾向がありますか?
すごくシンプルに言うと、より「早期化」「長期化」「過密化」しているのが、今年の就職活動の特徴だと思います。
増本さん
「いつから面接や内定出しを開始しますか」という採用プロセスの開始予定時期を尋ねたところ、2月までに内定を出す企業が22年卒では9%だったのが、23年卒は18.5%まで伸びていました。
このことからも見て取れるように、非常に早くから採用活動を始める企業が増えているんです。
なぜこんなに急に増えているんでしょうか。
早くに採用をするのはなぜかということですよね。
企業からすると、新入社員を出迎えるのは来年の4月じゃないですか。
まだまだ先ですね。
ですから、本来は、早く採用活動を始めれば始めるほど、企業は大変なんです。
学生
田嶋
費用がかかるということですか?
金銭的なこともそうですが、途中で選考辞退をされるケースがあるので、採用期間も長く、時間手間含めてコストが大きくなってしまうんです。
なぜ、大変になるとわかっていながら、時期を早めているんでしょう?
本心ではそんな早くからやりたいなんて思っていないと思うんですよ。
でも「採用したい」というニーズがある一方、「採用できない」現実があるというのが理由なんです。
採用できない現実?
日本における就職活動は「新卒一括採用」といわれているように、学生が一定の期間で就職活動をするというのが昔からの特徴なんです。
就職活動をする学生は全国にだいたい45万人から50万人ぐらいいるというふうにいわれているんですけれども、企業はその一定数しかいない学生を一斉に採用しようとしています。
ちなみに2022年卒の求人倍率は1.50倍となっています。
学生が内定を獲得して就職先を決めてしまえば、ほかの企業はもうその学生と会えない。
ですから、採用意欲が高まり、人手不足でもある中、早く自分たちのことを知ってもらい、応募してもらうために、どんどん前に出ていかざるをえなくなっているのが今の状況です。
やっぱり早くから就活を始めていた人の方が、内定を早く、たくさんもらうものなんでしょうか。
早く始めたら早く決まるというわけでは全然ないです。
ただ、早い時期に企業に対する理解を深めたり自分なりの考え方を整理したりして、準備を整えた上で就活をしているところは1つ強みになると思います。
例えばインターンシップに参加して、会社の中の情報などを知った上で「だから自分はここがいいんです」と話す学生と、説明会に参加した2週間後に面接があって情報が限られた中で話す学生では理解の深さが違う可能性が高いですよね?
最初は確かに、早い時期に就活を始めた学生の方が内定率が高く出るんです。
なぜかというのは、単純に選考が早く進んでいるからです。
ですが、最終的にはあまり変わらないんですよ。
そうなんですか??
早く始めた人がすごいとか、インターンシップをスタンプラリーのようにたくさんやっている人がすごいんじゃないんです。
社会で働くということや仕事の内容を理解する。自分自身を深く理解する。それを相手に伝える準備をする。
こういうことを自分自身でどれだけしてきたかという話だと思います。
もうひとつ重要なポイントをお伝えすると、早期化だけではなく長期化も顕著になっています。
入社した企業からいつ内定をもらったかというのを調査しているんですが、22年卒を見るとピークの時期は4年生の6月なんです。
早期化していても、最終的に入社する企業から内定をもらうのは6月が多いんですね。
3月1日時点での内定率は22.6%なんですが、それでもみんな就職活動をその後も続けているんですよね。
どういうことかというと、意中の会社に決まってないんですよ。
本当にいきたい会社じゃないってことですか?
そうです。正確に言うと、意中の会社、いわゆる多くの就活生に人気がある大手企業の内定出しが、6月に集中していることを意味しています。
長期化すればするほど、学生も疲れてきてしまうと思うんですが、心がけておくべきことはありますか?
内定をゴールにしないことですね。
本来なら大学生活でつくはずだった力が、就活ばかりに気持ちとエネルギーをとられて、失われていくのは本末転倒だと思うんですね。
実際に僕も「剣道部のキャプテンに他薦されているんだけれど、夏のインターンシップに行かなきゃいけないから、やらない方がいいですか」と聞かれたことがあります。
キャプテンとして力を蓄えられるような最高の経験を上回るインターンシップなんて、どこにあるのでしょうか?
迷ってちょこちょこ就活をやるくらいなら、本気で何かに一生懸命取り組んだ方が、よっぽど採用選考の場面で話すことが増えます。
就活ばかりではダメなんですね。
そうですね。
実はコロナ禍になって選考のオンライン化が広がり、就職活動は効率化しています。
今までだと、例えば往復2時間かけて1時間半の説明会を聞きに行こうとした場合に、3時間~4時間は、使うじゃないですか。
はい。
これがオンラインだったら、その同じ時間で3社くらいの説明会が聞けるわけですよ。
より多くの企業と時間やお金をかけずに出会えるようになったんですね。
どこに住んでいても参加できますし、説明会自体も後からアーカイブなどで好きな時間に見られるじゃないですか。そう考えると企業との出会いは非常に効率化していますね。
確かにそうですね。
今のこの環境下で、非常に求められているものがあります。
何でしょうか?
情報を収集するリテラシーです。自分から情報を取りにいくということですね。
過去の就職活動では学校に行けばみんながリクルートスーツを着始めていたり、キャリアセンターにガイダンスの立て看板が出たりしました。
友達と会えば「今日あそこの説明会行く?」という話になって、自分が求めなくても情報が入ってきたわけです。
今はまわりの動きがよく見えなくなっている。
だからこそ、自分から情報を取りにいくということをしないと情報が入ってこないんです。
一方で情報自体はどんどんオープンになり、アクセスしやすくなってるんですね。なので、リテラシーで大きな差が出てきます。
ただし、ここで重要なことがあります。情報は無数にあるので自分に選ぶ基準がないと探し当てられなくなります。
自分自身の目的意識や求めるものが何かということとセットでリテラシーが求められています。
なるほど。
「長期化」「早期化」と並んで、もうひとつ。「過密化」が皆さんに迫ってきています。
過密化…。
この図の3月を注目してください。どの項目も前年より割合が高まっているのが分かります。
一方で、4月、5月は前年より数値が下がってます。
確かに。
何が起きてるかというと、3月にさまざまな活動の開始が集中しているということです。
A社の説明会をやっている時にB社のエントリー締め切りがあってC社の面接があってD社の最終選考があるというようなことが、すごくタイトなタイミングで行われるようになっているんですね。
効率化したからってことですか?
そうです。採用の流れがオンライン化することによってギュッとスピーディーに行われるようになり、過密化が起こりました。
それは、就活生の1日の時間の使い方に跳ね返ってきています。
自分が何を求められて、そのために何をいつまでに準備をしておかなきゃいけないのかというスケジュールを把握することがよりタイトに求められるってことなんです。
結構忙しそうですね。不安です。
エントリーシートを締め切りの当日にまとめて書こうしてもうまく書けるわけがないですよね。
ですから、いつから準備を始めなければならないかを逆算して日々の行動に落とし込んでいかないと、だんだん動けなくなっていきます。
ちゃんとスケジューリングできていても、急に「1次選考が通ったから2次選考に来てください」というようなことが突発的に入ってきたりするわけです。
難しいですねえ。
自分自身をマネジメントする能力が必須になっています。
ただ、これは就活だけに必要なことではなく、ビジネスではこれを当たり前にできる人がパフォーマンスを上げているという大事なスキルです。
だから今就活を通して学んでいることは、社会に出てからもめちゃくちゃ役にたつと思いますよ。
学生たち
分かりました。ありがとうございました。
データで読み解く23年卒生就活:前後編はこれで終わりです。
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