就活ニュース

就活生のメンタルケア(2)ストレスに強くなる心と身体の作り方

2024年07月18日

  • お問い合わせ

「自分はメンタルが弱いから…」そう思い込んでいる人はいませんか? 実はそんな人でも、考え方や過ごし方を変えるだけで、ストレスに強くなれる可能性があるそうです。

就活のストレスから身を守って健康に過ごすためにできることは? 教育現場のメンタルヘルスの専門家に聞きました。

(聞き手:岡本瑶 平野昌木)

ストレス対策のカギ「認知のクセ」を知る

学生
平野

就活のストレスに強い心や身体を作るために、出来ることはあるのでしょうか。

健康心理学的な観点になりますが、やはりまずは基本的な食事、睡眠、運動。生活習慣を整えることは、メンタルヘルスの向上に役立ちます。

北見准教授

あと「自分なりのストレス解消法」も、一時的には効果があります。

ですが、やっぱり根本的にストレスに強くなるためには、自分の「物事の捉え方のクセ」について考えないといけません。

湘南工科大学 北見由奈准教授
公認心理師、指導健康心理士。学校教育現場に関わる人々を対象に、健康心理学の考え方からメンタルヘルスの向上を目指し、ライフスキルの向上や就職活動ストレスの軽減、ソーシャルメディア依存などについて研究している。

クセ、ですか?

前半でも「前向きな意味づけが大事」という話をしましたが、「物事をポジティブに捉える」クセを持つ人は、何でも自然と前向きに捉え、ストレスをためにくいことが調査からも明らかになっています。

一方、「物事をネガティブに捉える」クセのある人は、何をしていても誰と話していても、ネガティブな考え方をする傾向があります。

ストレスに強くなるためには、ポジティブな捉え方や意味づけをすることを、まず意識して生活してみるのが大事です。

「前向きな意味づけ」については前編の記事をご覧ください👇
就活生のメンタルケア(1)「就活うつ」を防げ!就活のストレスポイントと対処法とは?

ポジティブ思考を育てるためには

学生
岡本

私はネガティブな性格なので、ポジティブに物事を捉えて、と言われても難しそうです…。

参考になるのは、日頃からポジティブな考え方を持つ人を観察したり、そういう人と話したりすることですね。

ネガティブな人から見ると、ポジティブな人は「ちょっと合わないな」と思うかもしれませんが、まずは「そういう考え方もあるんだ」と受け入れてみる。それが第一歩です。

なるほど、ポジティブな人と積極的に話すのもいいんですね。

あと「認知行動変容アプローチ」という、グループワークなどで考え方のクセを変える方法もあります。

これは、他の人と一緒に、さまざまな場面について「ネガティブな人だったらどう考えるだろうか」「ポジティブな人はどう言うと思うか」と、それぞれの思考を想像してみる方法です。

そういう捉え方をした場合、心や身体はどんな状態になるかも一緒に考えます。「ネガティブな人は不安や悲しみが大きくなる」「ポジティブな人は何でも前向きにチャレンジできそう」ということも発見できます。

こうした経験をすると、次に同じような場面に自分が出あったとき、ネガティブなクセのある人でもポジティブな考え方にたどり着きやすくなります

例えば、どんな場面を考えるんですか?

きょうは朝から大雨で大変でしたよね。そこで先ほど大学の授業で学生にこう聞きました。

「雨の中、駅から歩いてびしょぬれになるし、みんなネガティブな気持ちで来たと思うけど、この状況を少しでもポジティブに捉えるとしたら、どんなふうに考えられる?」って。

難しい…。

ポジティブな要素はなさそうです…。

この日は大雨 びしょぬれになって大学を訪問しました

すると学生から「きょうのバイトはきっとお客さんが少ないから、ちょっと楽できそうです」という意見が出ました。

また「きのうまで暑くて熱中症になりそうだったけど、きょうは涼しくてちょっと気持ちが落ち着きました」と言う学生もいて、みんな「そうだよね」と共感していました。

確かに、そうですね。

「雨」を例にしたネガティブ思考とポジティブ思考の違い

そういう練習をすることで、ポジティブな思考に近づけるんですね。

意識して視点を変えないと自分の捉え方や考え方が当たり前になりがちですが、あえて違う考え方をしてみることで「捉え方でこんなに気持ちが変わるんだな」とわかります。

考え方のクセは、生まれつきのものではないんですか?

生まれ持つ要素もゼロではないですが、育ってきた環境や自分の経験によるところが大きいです。

うまくいかない経験をしたことが多いか、そのときに親など周りの人からどんな言葉をかけられていたかなども、影響しますね。

環境など後天的なもので考え方のクセがついているほうが大きいので、クセだったと気づくことで十分変えられる可能性があるものなんです。

「ソーシャルスキル」がある人は、就活のストレスが少ない!

就活のストレスを減らすために、ほかにも具体的に行動できることはありますか。

日ごろの学生生活の過ごし方を変えることでも、ストレスを減らせる可能性があります。

私は「どういった学生が就活ストレスを感じにくいか」を調べる研究も行いました。

その結果「ソーシャルスキル」が高い学生ほど、就活をしていてもストレスの値が低く、メンタルヘルスが安定した状態になっていたという結果が出ました。

「ソーシャルスキル」って何でしょうか?

社会の中で生きていくために必要なスキルのことを、ひろくそう呼んでいます。私の研究では大まかに3つのカテゴリーに分けました。

①他者とのかかわりをスムーズにできる「コミュニケーションのスキル

②他者とのトラブルが起きたときに対処できる「問題解決のスキル

③スケジュール管理・計画などの仕事の遂行に関する「マネジメントスキル

それぞれのスキルを数値化し、ポイントが高い学生と低い学生で比較したところ、高い学生のほうが就活のストレスを感じにくく、メンタルヘルスの悪化も防げていました。

ソーシャルスキルを身につけることでも、安定したメンタルで就活を最後までやり遂げられるようになるのではという結論に至りました。

それぞれのスキルが高い人が、就活でストレスを感じにくいのはなぜでしょうか?

まず「コミュニケーションスキル」が高い人は、情報収集力が高いことにつながります。

誰かにすぐ相談できるという人は、自分に有効な情報を得やすく、悩んだときもストレスを解消しやすいんですね。

また「問題解決のスキル」があれば、ES提出や面接などでうまくいかなかった時に、どう改善して次につなげるかと考えることができます。「マネジメントのスキル」があれば、自分の興味や適性をきちんと理解できます。

これらのスキルが高い人は、先ほど話した「ポジティブな考え方のクセ」を持つ人であることが多く、相関関係があるような状態なんです。

「ソーシャルスキル」を高めるためにできることは?

こうしたスキルを高めるために日々できることはありますか?

これらのスキルがあるかどうかは、日頃からスキルが必要な場面を経験しているかが大きく影響してきます。

ビジネスの世界では、ソーシャルスキルを獲得したい人を集めて、グループワークなどでトレーニングプログラムをすることもあります。

例えば、接客でのトラブルの場面を想定して、どのように解決するかをロールプレイで学ぶ研修などです。

学生の場合はプログラムのかわりに、日頃の大学生活や授業の中で、いろいろなグループワークなどに積極的に参加することですね。

グループワークって面倒くさいと思うかもしれないけど(笑)、みんなで課題に一緒に取り組んで解決するという経験は、ソーシャルスキルを高めるためにも大事です。トレーニングになると思って参加してもらえればと思います。

コミュニケーションが苦手な人もいると思いますが、ソーシャルスキルも経験を積めば伸びるのでしょうか?

はい、伸びますよ。そういったプログラムの前後で明らかに参加者のスキルは変わっていきます。

ただ、プログラムが終わるとまた元に戻ってしまう傾向もあるので、せっかく上がったスキルを低下させないために「学んだことを生活の中で実践して、セルフトレーニングを続ける」ことが大事です。

自分で取り組んでいく意識を高める…できますかね。

一度参加した授業のグループワークに、もう一度参加してみるのもいいですよ。

1回目と比べて成功度やスピードが上がったことが実感できて自信につながりますし、スキルへの意識も高くなります。

大事なのは、個人で取り組もうとするのではなく、誰かと関わりあう機会を増やしながらスキルを高めていく、そして繰り返し行うことです。

時間的な制約もあって大変だと思いますが、ぜひこうしたことも意識しながら、ストレスなく就活を頑張ってほしいです!

ありがとうございました!

撮影・編集:脇本彩香

※「ラジオで開講!NHK就活応援ニュースゼミ」で放送予定

最近のニュース一覧

New

就活生のメンタルケア(2)ストレスに強くなる心と身体の作り方

2024年07月18日

New

25年卒が「最も内定につながった」と思った活動は?

2024年07月16日

就職内定率は9割近くに 視野を広げて自分に合った企業選びを

2024年07月11日

就活生のメンタルケア(1)「就活うつ」を防げ!ストレスと対処法とは?

2024年07月10日

「働く」ってどういうこと?就活生が専門家と考えてみた!

2024年07月04日

池上彰さんと「やりたいことの見つけ方」考えました!聴き逃し配信は7月13日(土)午後10:55まで

2024年06月26日

若手社会人に聞く“働くことのリアル”(3) 入社後のギャップはあった?

2024年06月25日

「配属ガチャ、見直します」変わる企業の人事異動

2024年06月24日

25年卒の「就活川柳」学生のホンネは…

2024年06月17日

若手社会人に聞く“働くことのリアル”(2) 仕事は怖いと思っていたけど…

2024年06月14日

就職内定率は8割を超える 企業の採用意欲は高いので焦らずに

2024年06月10日

「オワハラ」実際に受けたら?そのときどうすれば?

2024年06月06日

SNS上の就活の不安をあおる不確かな情報に注意を

2024年06月04日

就活の採用面接 政府ルールでは6月1日から 人材不足で前倒しも

2024年06月03日

若手社会人に聞く“働くことのリアル”(1) 「就活の軸」どう決めた?働いて変わった?

2024年05月30日

26年卒・就活スタートガイダンス(2)「就活の軸」ってどうやって見つけるの?

2024年05月29日

インターンシップ 25年卒が参加した結果は?

2024年05月23日

26年卒・就活スタートガイダンス(1)まず何から始めればいいの?

2024年05月21日

内定率は7割を超える 早期化進むなか納得感ある企業選びを

2024年05月14日

「理系学生だけど文系の職種に就きたい…」どうすれば?

2024年05月10日

25卒の求人倍率は1.75倍 3年連続で上昇 コロナ禍前の水準に回復

2024年05月08日

聴き逃し配信中! ~6月8日(土)午後10:55まで

2024年05月02日

25年卒が選ぶ「就職企業人気ランキング」ことしの注目企業は?

2024年05月01日

入社後の配属はいつ決まるの?希望は聞いてもらえる?

2024年04月22日