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「オワハラ」実際に受けたら?そのときどうすれば?

2024年06月06日

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内定をもらえて喜んでいたら、別の企業への就活をやめるよう言われた…。当然と思う人もいるかもしれませんが、これはいわゆる「オワハラ」です。

”どういうことが「オワハラ」になるの?” ”ほかの企業の選考を続けて受けたい場合はどう対応したらいいの?” 「オワハラ」について、労働問題に詳しい弁護士に見解を聞きました。

※ふだんの記事では内容をわかりやすくするため「内々定」も含めて「内定」としていますが、この記事では分けて記しています。

オワハラって何?

オワハラとは、企業が就活生に内(々)定を出すのと引きかえに、ほかの企業への就活をやめるよう強要することで、「就活終われハラスメント」の略称とされています。

オワハラは、就職活動の早期化や、学生優位の売り手市場の傾向などによって、近年、特に問題となってきています。

ことし4月に政府が出した「就職・採用活動に関する要請」の中でもオワハラについての説明があり、「就職をしたいという学生の弱みに付け込んだ、学生の職業選択の自由を妨げる行為」として、防止の徹底を求めています。

どういうものが「オワハラ」なの?

要請の中では、次のような行為が「オワハラ」にあたると挙げられています。

・自社の内(々)定と引きかえに、他社への就職活動を取りやめるよう強要すること

・自由応募型の採用選考において、内(々)定と引きかえに、大学等あるいは大学教員等からの推薦状の提出を求めること

・他社の就活が物理的にできないよう、研修等への参加を求めること

・内定承諾書等の早期提出を強要すること

・内(々)定辞退を申し出たにもかかわらず、引き留めるために何度も話し合いを求めること

・内(々)定期間中に行われた業務性が強い研修について、辞退した場合において研修費用の返還を求める、あるいは事前にその誓約書を要求すること

就活をやめるように直接求められるだけでなく、いろいろなケースがオワハラにあたることがわかります。

具体的にはどんなオワハラが?

こうした呼びかけにも関わらず、25年卒の就活でも、オワハラを受けて困っているという学生の声が出ています。

東京都内の私立大学のキャリアセンターには、ことし初めごろから、学生からのオワハラに関する相談が相次いでいます。

<学生の声>

・1月に内々定の連絡。他社の選考について聞かれ、就活を続けるつもりだと伝えたら、内々定は保留となった。

・ある会社から内々定の連絡の際、内々定を受ける場合は大学からの推薦状を提出し、他社選考をすべて辞退するよう言われた。

・第一志望は別にあり、そこがダメなら行きたいが、内々定通知書に「選考中の企業、あるいは他企業の内々定をお持ちでないことが前提となります」との記載があり不安を覚えた。

・ある会社より内定通知をもらった。「正当な理由がない限り辞退ができない」と書かれているが、承諾後辞退してもよいのか。

・ある会社から内々定をもらい、内定承諾書を提出したところ、雇用契約書が送られてきて3営業日以内に提出を求められている。ただ、他の企業も受けてから入社先を決めたいので困っている。

・ある会社から入社誓約書を提出するように言われ、担当社員からは「提出したら他の企業の選考は受けてはいけない」と言われている。本当に他は受けてはいけないのか知りたい。

・ある会社から内々定をもらったが、早い時期に承諾書を提出するよう言われ、提出後は就活を終えてキャリアセンターに内定登録を行うよう言われている。現在選考中の企業もあり結果が出るまで就活継続したいが、どうすればよいか。

この大学のキャリアセンターの職員によると、ここ数年、オワハラに関する相談は増えてきていましたが、ことしは特に多く感じるということです。

そもそも「内定」ってどういう状態?弁護士に聞きました

こうしたオワハラを受けた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。労働問題に詳しい向井蘭弁護士に取材しました。

向井蘭弁護士

まずオワハラについて考える時、「内定」と「内々定」を区別する必要があるそうです。

労働法に基づいて考えると、一般的に「内定」とは「雇用契約書(入社誓約書など)」を交わした時点から生じる、契約状態のことを指します。

それ以前の「内々定」の状態では契約が成り立っていませんが、「内定」以降は法的拘束力がある状態となり、企業側からは基本的には取り消すことができなくなります

向井弁護士

そして、「内定」状態になったあとも、雇用される側からの解約(=学生からの内定辞退)は基本的には自由にできるといいます。

雇用契約書を書いた時点で、企業にはその契約を守る義務が生じる一方で、労働者側は2週間前までに通知をすれば解約することができます。

このことを知っておけば、たとえ入社誓約書などの書類を早々に書かされても、そのあとで内定を学生側から辞退することはできるとわかり、それほどプレッシャーに感じることはなくなるでしょう。

また内定に至っていない内々定の時点での発言ややりとりについても、拘束はされません。

なお、雇用する側(=企業)が学生の内定を取り消せるのは、次のような場合に限られるそうです。

・学生が大学を卒業できなかった場合
・学生が病気などで入社できなくなった場合
・企業の業績不振

これら以外の場合は、基本的には企業側から内定の契約を破棄することはできないということです。

もし実際にオワハラを受けたら…

では、もし実際にオワハラを受けたら、どのように対応すればいいのでしょうか。

さきほど挙げた事例の中には、内定を出すかわりにほかの企業への就活をやめるよう強制された、推薦状の提出を求められた、といったケースがありました。

その際、「就活をやめます」と伝えてしまった、でもやっぱり就活を続けたい、そんな時はどうしたらいいのでしょうか。

労働者は基本的に労働法で守られており、いったん内定をもらってしまえば、めったなことでは解雇される(内定を取り消される)ことはできないと考えます。

法的には、たとえ「就活をやめます」と言った後に続けていたとしても、それを理由に内定の取り消しはできません。

同様に、推薦状の提出を断ったり、内定者研修の日に他社の選考に行ったりしても、それを理由に取り消すことはできません。推薦状については、出さないと公表している大学もあるくらいです。

また、内定承諾書や入社誓約書には「内定を辞退した場合に研修費を求める」といった記載のあるものもみられますが、これについても支払い義務が生じる可能性はほぼないといいます。

日本の損害賠償請求は、実際に損失が出た場合にしか行えないようになっています。たとえば「入社の前日に内定を辞退した」ということなら別ですが、常識的な時期での辞退では、実際にまだその人に対する研修費用などは発生していないケースが多く、企業からの請求はできないと考えます。

このほか「内定の辞退を申し出たのに、あの手この手で辞退させてくれない」ケース。こんなときに上手に断るための方法は?

先ほど言ったように、基本的には労働者側からの内定の辞退はできるものなので、堂々と辞退すればいいです。

どうしても断らせてくれない企業には、弁護士に依頼したり、退職代行を使ったりして内定の辞退を伝えるのも一つの方法です。

学生は優位な立場!だからこそ節度を持って

労働問題として見ると、基本的には企業側から内定を破棄することは難しく、逆に学生側からは内定を辞退できるということでした。

一方で、もし複数の企業から内(々)定を得たなら、入社しない企業には早めに辞退の意思を伝える姿勢も大切です。

ことし4月にマイナビが行った学生へのアンケート調査では、複数の内々定を保有している学生で、辞退の意思を伝えていない企業がある割合は55.6%と、半数以上でした。

それぞれ志望した企業の内(々)定を絞り込むというのは難しい判断ですが、いま学生は優位な立場だからこそ、思いやりや節度を持って対応してほしいと、向井弁護士は話します。

内定をたくさん保持したとしても、実際に行ける企業は一つだけです。内定の辞退はできるとはいえ、ギリギリまで辞退を伝えないのは企業にとっては目に見えない損失が少なくありません。

そうした考えや態度のまま社会に出ると、仕事でトラブルを引き起こすおそれもあります。

意思が固まったら早めにきちんと先方に伝える習慣を今から身につけておくよう、就活生のみなさんには心がけていてほしいです。

「オワハラ」は受けないことが望ましいですが、もし困ったときにはこの記事を参考にしてみてください。

取材・編集:脇本彩香

(「ラジオで開講!NHK就活応援ニュースゼミ」で放送予定)

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