Q.妊婦への接種は?安全性は?

A.
新型コロナウイルスワクチンの妊婦への接種について、厚生労働省は妊娠中や授乳中、妊娠を計画中の人も接種できるとしています。

妊婦へのワクチンについては、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会が2021年8月14日に提言をまとめています。

この中では、国内で接種が行われているファイザーやモデルナのmRNAワクチンについて、妊娠の時期にかかわらずワクチンの接種を勧めるとしています。

さらに妊婦の感染はおよそ8割が夫やパートナーからだとして、妊婦だけでなく夫やパートナーについてもワクチンを接種するよう呼びかけました。

提言では、妊娠中、特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいとされているとしたうえで、妊婦がワクチンを接種しても流産や早産などの頻度は差が無いと報告されているとしました。

そして、特に感染の多い地域の人や、糖尿病や高血圧、気管支ぜんそくなどの基礎疾患がある人は、ぜひ接種を検討してほしいとしています。

また、副反応については妊婦と一般の人に差はなく、発熱した場合には早めに解熱剤を服用し、解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンは頭痛がある場合にも服用して問題ないとしています。

接種を希望する際の注意点としては、あらかじめ健診を受けている病院の医師に相談し、接種しても良いとされれば、接種会場の問診医に伝えて接種を受けることや、2回のワクチン接種を終えたあとも、これまでと同様にマスクの着用や人混みを避けるなどの対策を続けることなどを挙げています。

アメリカCDC=疾病対策センターは、2021年8月11日に、妊娠中の女性が新型コロナウイルスのワクチンを接種することによる安全性に懸念はみられないとする分析結果を公表し、妊娠中の女性にも接種を強く推奨する声明を出しました。

CDCでは「mRNAワクチン」について、妊娠20週までに1回以上接種したおよそ2500人の女性の分析を行いました。

その結果、流産した割合はおよそ13%で、一般的な流産の割合、11%から16%と比べて差は無かったということです。

このため「接種した人で流産のリスクが高まることはなかった」として、安全性に懸念はみられないと結論づけました。

CDCのワレンスキー所長は「感染力の強いデルタ株の拡大でワクチンを接種していない妊婦の重症化がみられる中、これまで以上に接種が急がれる」とする声明を出し、利益がリスクを上回るとして、接種を強く推奨しました。

また、CDCが2021年6月に公表した論文では、2020年12月14日から2021年2月28日の間にワクチンを接種した人のうち、妊娠していた16歳から54歳の3万5691人について、ファイザーかモデルナのワクチンを接種したあとに症状が出た割合や赤ちゃんへの影響を調べています。

このうちワクチン接種後に出た症状について、たとえば25歳から34歳までの妊婦では、2回の接種のあと、▽接種した部位の痛みが出た割合は91.9%と、妊婦以外の女性の90.5%よりやや高かった一方、▽けん怠感は72.3%で、妊婦以外では76.3%、▽頭痛は56.5%で、妊婦以外では66.4%、▽発熱は34.8%で、妊婦以外では50.9%と、妊婦の方が頻度が低くなっていました。

流産や死産になった割合、それに生まれた赤ちゃんが早産や低体重だった割合は、ワクチンを接種した妊婦でも、新型コロナウイルスの感染拡大以前の出産で報告されていた割合と差が無かったほか、ワクチンを接種した妊婦で生まれたばかりの赤ちゃんが死亡したという報告は無かったということです。

(2021年8月19日時点)