新卒採用のコミュニケーションツールが、”メール”から”メッセージ”へと変わるかもしれない。学生たちが日常的に利用しているLINEが、企業と学生を直接つなげる新サービスをスタートさせる。就職情報サイトを通じて企業にエントリーし、メールや電話でやりとりする従来の就活のあり方にも変化が生じる可能性がある。

◆いまだにメールがメインの企業側

学生と企業とのやりとりは、メールが圧倒的に多い。

LINE株式会社「新卒採用における学生とのコミュニケーションに関する調査」より

LINE社が全国の人事・採用担当者を対象に行った調査によると、新卒採用の過程で利用している学生とのコミュニケーションツールは、「メール」が63%。

続いて「ナビサイトの連絡ツール」が16%、「電話」が13%。LINEを含むSNSなどを利用している企業は1割に満たなかった。(調査期間:8月16日-9月2日、有効回答数:163人)

◆学生のメール離れ 顕著に

ただ、学生は、メールをあまり使っていないのが現状だ。

「就活関係のメールが毎日30通くらい来るんですけど、基本的にほとんど見ません。消すのも大変なので放っておいたら、携帯のメールボックスの未読メールが2700通を超えてしまいました」と戸惑いながら話すのは、就職活動中の女子学生。

日常生活でもメールを使う習慣がなく、LINEやメッセンジャーといった”メッセージ”ツールで事足りているという。「メールで連絡をするのは、大学のOBとか教授とか上の世代の人とだけで、それも2、3カ月に1回程度だから、普段はチェックもしない」と話す。

総務省情報通信政策研究所の調査によると、20代では2013年に、LINEやTwitterといったソーシャルメディアの利用時間がメールを抜いている。ちなみに、30代以上では、現在でもメールの利用時間の方が長い。20代のLINE利用率は98.1%だ。(「平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より　調査期間:2019年2月23日-3月1日、サンプル数:13歳―69歳までの男女1500人)。

◆新ツールでミスマッチは解消するか!?

こうした状況の中、多くの学生が利用するLINE社が11月リリース予定の新サービス「LINE採用コネクト」。

学生は、合同説明会などで、企業のQRコードを読み取るだけで、就職情報サイトなどを通じたエントリーを経ずに企業とつながり、匿名のまま”気になる”の企業の情報をリアルタイムで受けとることができるという。

一歩進んで企業説明会などに参加する段階で、個人情報を登録する流れだ。
学生のプライバシーに配慮して、既読がわかる機能はつけないという。

登録後はLINE上で、企業説明会などの案内をプッシュ通知で受け取ったり、参加予約などのスケジュール調整もワンタップで完了できるという。

また、”おすすめ機能”を使って、友達や後輩と気軽に気になる企業をシェアすることができる。

※ 写真は開発中のイメージです(LINE株式会社提供)

学生だけではなく企業側にもメリットがあるという。LINE社が行った前述の調査では、多くの企業が、学生とのコミュニケーションに課題を抱えていたことがわかる。

LINE株式会社「新卒採用における学生とのコミュニケーションに関する調査」より

新たなサービスでは、学生側は、企業からのメールのチェック漏れを防ぐことができ、企業側も、メールや電話で何度もリマインドする手間が省け、双方へのメリットが見込めるという。

LINE採用コネクトの担当者は、「新たなツールは、大学1年生から4年生まで、どの学年とも登録時期を設けずにつながることができ、今後の通年採用化に対応している」。

「就活時期に限らず、気になる企業と”友達”になることで、企業の生の情報に触れて、働くことへの距離を縮め、社会人の第一歩を前向きに踏み出してもらえたら」と話している。