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医療
2019.10.08
認知症の診断に必要な認知機能の検査がわずか3分で完了する方法を大阪大学などの研究グループが開発し、検査時間の大幅な削減や、患者の心理的な負担の減少にもつながるとして、実用化が期待されています。
いま広く使われている、問診を中心に行う認知機能の検査は、専門的なスキルを持った医師などが行う必要がある上に、時間も20分ほどかかります。
また、「ここはどこですか」と尋ねたり、時計を見せて「これは何ですか」と尋ねたりするなど、質問が簡単すぎて患者が不愉快になったり、答えられなくて恥ずかしく感じたりするなど、検査を受ける人の心理的な負担も課題でした。
大阪大学大学院医学系研究科の武田朱公准教授らのグループは、モニター上に問題や答えの選択肢を表示し、それを見る視線の動きを分析して認知機能を検査する新たなシステムを開発しました。
このシステムでは、例えば、はじめにクマがいくつかの食べ物からミカンを選んで食べるアニメーションが流れます。その時、クマが何を食べたのか、覚えてもらいます。
そのあとに画面が切り替わり、画面に並んでいる食べ物の中から、クマが食べた物を見つめるよう求められます。
認知機能に問題がない場合は、次第にミカンに視線が集まっていきますが、問題がある人の場合、ミカンだけではなく、ほかの食べ物やクマなど視線はばらけてしまいます。
システムではこうした目の動きを分析し、わずか3分ほどで認知機能を100点満点で判定します。
これまで数百人に試してもらい、従来の検査と同じレベルの結果が得られるようになったということです。
武田准教授によりますと、研究グループのメンバーが担当する認知症の外来でも、診断を求める人たちで予約が1か月先までいっぱいになることがあり、少しでも素早い診断を実現したいと、このシステムの研究に取り組んだということです。
グループは、今後、このシステムの実用化を目指したいとしています。
武田准教授は「将来的には、住民検診や家庭で認知機能を簡単に検査できるようにしたい」と話しています。
※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://www.nature.com/articles/s41598-019-49275-x