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国民審査 海外在住日本人の
投票認めないのは憲法違反か2022年5月25日判決
大法廷
どんな
裁判か
- 海外に住む日本人が最高裁判所裁判官の国民審査に投票できないのは憲法違反かどうかが争われた裁判
- 最高裁大法廷は、海外での投票を認めない国民審査法の規定は憲法違反と初判断
- 15人の裁判官全員一致の結論 1人が補足意見
海外に住んでいたため2017年の国民審査に投票できなかった日本人の映画監督や弁護士など5人は、国民審査で在外投票ができないのは公務員を罷免できる権利を定めた憲法15条などに違反すると国を訴えました。
1審と2審は在外投票を認めないのは憲法違反だと判断し、そのうえで2審は次回の国民審査で在外投票ができなければ違法になると指摘しました。
最高裁判所大法廷は判決で、「憲法は、選挙権と同様に国民審査の権利を平等に保障しており、権利を制限することは原則として許されない」と指摘。
その上で「現在とは異なる投票用紙や方法を採用する余地もある。審査の公正を確保しつつ、投票を可能にするための立法措置が著しく困難とはいえず、やむをえない事情があるとは到底いえない」として、海外での投票を認めていない国民審査法は憲法に違反するという初めての判断を示しました。
そして、原告5人のうち今も海外に住む1人について、次回の国民審査で投票を認めなければ違法になるとしたほか、「正当な理由がないのに国会が長期にわたって立法を怠った」として、国に対し5人に賠償するよう命じました。15人の裁判官全員一致の結論でした。
最高裁が法律の規定を憲法違反とするのは11例目で、過去のケースではすべて法改正が行われています。
国政選挙ではできる在外投票
選挙については1998年に在外投票の制度ができました。
当初は、衆議院選挙と参議院選挙の比例代表しか投票できませんでしたが、選挙区についても在外投票を認めるよう求める訴えが起こされ、2005年に最高裁判所大法廷が、「投票を比例代表に限定する制度は選挙権を保障した憲法に違反する」という判断を示しました。
この判決を受けて公職選挙法が改正され、2007年の参議院選挙から比例代表だけでなく、選挙区でも在外投票ができるようになりました。
ではなぜ国民審査の在外投票はできないのでしょうか。
裁判で国は「国民審査は、議会制民主主義の根幹をなす選挙とは意義や沿革が異なり、不可欠な制度ではない」などと主張しました。
また選挙と国民審査では投票方法にも違いがあります。
選挙は当選させたい候補者などの名前を投票用紙に記入しますが、国民審査は投票用紙に裁判官の名前が印刷されていて、やめさせたい人の名前の上に「×」をつけます。
このため国は、国民審査は用紙の印刷などに時間がかかり、海外で行うには技術上の問題があるとしていて、これまでに在外投票を認める法案が国会に提出されたこともありません。
●この裁判についての最高裁判所の資料は
こちら(NHKサイトを離れます)
審査対象だった裁判官たちの判断は
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深山 卓也
プロフィール
結論と同じ
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三浦 守
プロフィール
結論と同じ
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草野 耕一
プロフィール
結論と同じ
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宇賀 克也
プロフィール
結論と同じ 補足意見あり
名前に×をつける現在のやり方以外の投票方法も選択肢となりうることや、情報通信技術が急速に発展して、国際的な通信にかかる時間や、情報の質、量も飛躍的に向上していることを考えると海外での投票を一律に認めないやむを得ない事情があるとはいえない。
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林 道晴
プロフィール
結論と同じ
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岡村 和美
プロフィール
結論と同じ
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長嶺 安政
プロフィール
結論と同じ
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安浪 亮介
プロフィール
結論と同じ
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渡邉 惠理子
プロフィール
結論と同じ
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岡 正晶
プロフィール
結論と同じ
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堺 徹
プロフィール
結論と同じ
審査対象ではなかった裁判官たちの判断は
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大谷 直人
プロフィール
結論と同じ
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菅野 博之
プロフィール
結論と同じ
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山口 厚
プロフィール
結論と同じ
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戸倉 三郎
プロフィール
結論と同じ