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ネット広告”1億3000万件”非承認 ヤフーどう判断?

ネット広告”1億3000万件”非承認 ヤフーどう判断?

2022.07.16

インターネット広告配信を手がけるヤフーは、様々な理由から掲載を認めなかった広告の件数が、昨年度およそ1億3000万件に上ったことを明らかにしました。このうち、明確な根拠を示さずに「世界初」や「No.1」などの最上級表現を用いていた広告については、前の年度のおよそ1.5倍にあたるおよそ2300万件の掲載を認めませんでした。

 

どんな基準で、どのように判断しているのか。

ヤフーのネット広告審査の担当者に取材しました。

膨大な数のネット広告を審査

私たちがネットで何かを検索した時に表示される広告やウェブサイトのディスプレイに表示される広告。

ヤフーは、そうしたネット広告を配信する事業を行っています。

広告主から配信の依頼がある広告は、一日あたりおよそ4000万件。

しかし、中には消費者の誤解を招くような過度な表現で法律に違反したものや、強い不快感を与えるような不適切な広告も含まれています。

ヤフーは、独自の基準に照らし合わせて審査を行っており、昨年度はおよそ1億3000万件の広告掲載を認めなかったことを明らかにしました。

増えるNo.1広告の非表示

このうち、最も多かったのは、明確な根拠を示さないまま「世界初」や「No.1」などの最上級表現を使っていたケースでした。

ヤフーの基準では、「最上級表示、No.1表示」を用いる場合、

▼表示の基となるデータを調査した機関の名前や調査の年などを明記していること、

▼データが1年以内の最新のものであること

の両方を満たしている必要があります。


これらの基準を満たさず掲載を認めなかった広告は、2021年度は、前の年度の1.5倍にあたる、およそ2300万件に上りました。

ジャンル別で見ると、化粧品やボディケア・ヘアケア用品が最も多く、全体の1割強を占めていたということです。

広告を規制する景品表示法やヤフーの審査基準への理解不足により、調査年などが書かれていないケースが最も多く、次いで根拠は書かれているが、文字が小さすぎて消費者が見えないようなケースが多かったです

中村茜さん
中村茜さんさん

二段階でチェック

ヤフー発表資料より

ヤフーは、こうした問題のあるネット広告について、二段階で審査しています。

まずは、システムによる機械的な審査です。

広告のテキストや動画、画像について、AIも使って解析します。

ここでは、あらかじめ設定したキーワードや特定の特徴を持つ画像などでフィルターをかけ、

▼過度に性的な表現が強調されているもの、
▼偽ブランドや薬物、武器など違法性のあるものを宣伝する広告などを判別します。


「No.1広告」については、「No.1」や「世界初」などの言葉が入っていれば最上級表示を用いた広告として、まず分類します。

そして、より高度な判断を要する場合に「人の目による審査」を行っています。

データの調査年の明記などの、上記の2つの条件を満たしていても、根拠データの提出を求めることもあり、最上級表示を使う根拠として不十分だと判断した場合は、掲載を認めないケースもあるといいます。

最上級表現については単純な審査ではありません。景品表示法の優良誤認に当たらないかについては、機械による審査だけでなく、人の目による審査を重視しています

中村茜さん
中村茜さんさん

人の目でも判断が分かれるような事例もあり、複数で判断するなど工夫をしています

一条裕仁さん
一条裕仁さんさん

審査を欺く悪質な手口も

機械的な審査と人の目によるダブルチェックでもすべての不適切な広告を防ぐことは困難です。

機械的な審査では、フィルターをすり抜けるようなキーワードの表現を使うことで意図的に審査をかいくぐろうとする広告もあり、また、いったん審査を経て承認された広告でも、掲載後に広告の中身が改変されるケースも見られるということです。

また、AIも万全ではなく、判断するための学習が必要で、そのためには、まず、人間が膨大な量の審査を行ってルール作りをすることが不可欠だといいます。

消費者の声に寄り添ったガイドラインに

ヤフーでは、特に悪質な広告に対しては、広告掲載に必要なアカウントの停止を行っているほか、直接やりとりのある広告主や代理店などに対しても、注意喚起を行うなどの措置をとっています。

そして、今後は、景品表示法や薬機法などの法律に基づいて作った基準による審査だけでなく、法律による規制の範囲内にとどまらずトラブルを未然防止していくといういう考え方で、消費者のニーズを取り入れるなどして独自のガイドラインを充実させ、広告審査に当たっていくことが必要だとしています。

行政による規制が強まることで、ネット広告の業界が先細ってしまうことがないよう、業界全体として自主的に適正な広告の確保を進めていこうとしています

一条裕仁さん
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