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これからのゲームは誰が作るのか? インディーゲーム新時代

2022.07.16 :

右肩上がりで成長を続けているゲーム市場。

いま注目されているのが、個人や少人数で制作された「インディーゲーム」です。

 

10代や20代の若いクリエーターが独創的な作品を次々と生み出し、去年のある調査では「男子小学生がなりたい職業ランキング」でゲームクリエイターが堂々の1位に。

 

ゲームは“遊ぶもの”という常識が、“作れるもの”へと変わってきています。

インディーゲーム展示会

先月開催された、個人や仲間同士などの少人数で制作された「インディーゲーム」の展示会。

出展しているのは専業のゲームクリエーターだけでなく、会社員や学生まで、さまざまです。
あまりの人気に会場では入場制限も
ミニチュアの庭園を撮影した映像で制作した脱出ゲーム、花札とリズムアクションを組み合わせた対戦型のゲームなど、独特な作品が並んでいました。
筐体まで自作するDIY精神
訪れたゲームファンたちに、インディーゲームの魅力を聞いてみると。
女性
「いろいろなタイプのゲームがあるところが好きです」
男性
「制作者の思いがそのままゲームに反映されているところが良いですね」

インディーゲームの魅力とは?

「インディーゲーム」の最大の特徴は、クリエーター自身の独創的なアイデアが詰め込まれたゲーム性やストーリーです。

大手のゲーム会社などが莫大な予算をかけて作るゲームは、誰もが面白いと思えるような完成度の高い作品が求められます。

一方、インディーゲームはグラフィックがシンプルだったり、独特な操作性に戸惑ったりすることもありますが、1度ハマるとクセになる作品ばかり。

価格も比較的安く気軽に遊べるのも人気の秘密で、いまでは世界で年間およそ9000タイトルが発表されているといわれています。

ゲームソフトの売上ランキングの上位に食い込むことも当たり前になってきていて、いまや“メジャー”と“インディー”の垣根は崩れつつあります。

ゲーム作りは“粘土遊び”!?

去年12月に行われた学生向けのインディーゲーム開発コンテスト。

全国から177組の小中高生が参加するこの大会で高校生たちを抑えて優勝したのは、当時13歳の少年でした。
提供:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン
京都市に住む、宮城采生(みやぎ・さい)さんです。

幼いころからのゲーム好きが高じて、9歳の時にみずからゲームを作るようになりました。

優勝作品は、童話「ブレーメンの音楽隊」をモチーフにした戦略アクションゲームです。
「BREMEN」プレー画面
プレーヤーは主人公の犬を操作し、仲間の動物たちの力を借りて敵のボスを倒します。

地形やボスの動きにあわせて、それぞれ強みが異なる動物たちを使い分けるのがコツで、戦略性の高さが審査員に評価されました。


ゲームで使われている楽しげなBGMは、宮城さんが自らパソコンの音楽ソフトで作曲。

さらに、動物たちの可愛いキャラクターのデザインもタブレット端末で自ら描き、創作しました。
キャラクターの動きがシンプルになるように、円筒形にしたという
作品の完成度を高め、市販を目指しているという宮城さん。

面白いゲームを作るための秘けつは、ゲーム好きな友達に遊んでもらい、感想を聞くことだといいます。
友人
「戦略性があって面白いなとは思うけど、もうちょっと広いステージが良いね」
宮城采生さん
「僕にとってインディーゲームづくりは、粘土遊びの強化版みたいな感じ。自分の表現したいことを自由に形にできる、誰にも邪魔されない自分だけの遊び場だと思っています」

誰もがゲームを作れる時代に

去年、教育サービス大手の「ベネッセコーポレーション」が「進研ゼミ小学講座」で実施した調査によると、男子小学生のなりたい職業ランキングでは、ゲームクリエーター・プログラマーが堂々の1位に。

ゲームの制作がここまで身近になった背景には、「ゲームエンジン」と呼ばれる制作ツールの普及があります。

ゲーム画面やキャラクターの動きを作るためのソフトウエアで、あらかじめ用意されたツールやプログラムを使いこなすと、効率的な制作が出来るようになります。
ゲームエンジン「Unity」の制作画面提供:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン
かつては大手ゲームメーカーが独自に開発していましたが、近年、高性能なゲームエンジンが個人でも手ごろな価格で使えるようになってきたのです。

さらに最近では、ゲームソフトの「ダウンロード販売」が主流になっています。

これによって、個人でも簡単に、世界中のプレーヤーに向けてみずから制作したゲームを届けることができるようになりました。


制作や販売のハードルがグッと下がったことですそ野が広がり、インディーゲームが大きな盛り上がりを見せているのです。

小説家志望からゲームクリエーターへ

200万ダウンロードを記録した、こちらのスマホゲーム。
ひとりぼっち惑星
見知らぬプレーヤーが送ってきたメッセージをランダムに受信して、偶然の交流を楽しむという独創的なゲーム性が話題となり、口コミで人気に火が点きました。

このゲームを作ったのは、クリエーターの「ところにょり」さんです。
ところにょりさん
芸術大学の文芸学科に通い、小説家を目指していましたが、自分の世界観や物語を伝える手法としてゲームに高い可能性を感じたと言います。
ところにょりさん
「アーティストが個展を開いて作品を発表するように、作品づくりの選択肢のひとつとして、(自分が表現したいものを)“ゲームにする”というのは、実際に起きていることなのかなと思います」
最新作のタイトルは「renal summer」。
腎臓病の犬のケアをするスマホゲームです。

プレーヤーは、犬が少しでも長く生きられるように、腎臓の老廃物を排出して血液の流れをきれいにします。
『renal summer』画面上部が犬とおじいさんで、画面下部は老廃物が溜まった犬の腎臓
このゲームの特徴は、現実の時間と連動していることです。

1週間のプレイ期間のあいだ、アプリを閉じていてもゲーム内の時間は進み、朝から晩まで犬の腎臓の状態をたびたび確認しなければなりません。

このゲームを作るきっかけとなったのは、ところにょりさんが、飼っていた犬を腎臓病で亡くしたことでした。

愛犬への思いや、命を支えることの大変さを表現する為に、プレーヤーがつきっきりで看病するゲームにしたのだといいます。
ところにょりさん
「自分の時間を削って犬という存在に分け与える。それを疑似体験できるようなゲームになるかなという思いでした。小説と比べても、ゲームではストーリーをきちんと体験できる。体験込みでコンテンツを設定できるのは、ゲームにしか出来ないことだと思います」

そのゲーム 編集します!

インディーゲームのクリエーターたちに熱い視線を注いでいるのが、出版業界です。

講談社は、ゲームクリエーターを支援するプロジェクトを2年前にスタートさせました。
講談社クリエイターズラボ オフィス
のべ2000人以上の応募者の中から将来有望なクリエーターを選び、年間1000万円を支援して、ゲーム作りに集中してもらうというもの。

漫画や小説などの編集経験者を担当として付け、ゲームの方向性のアドバイスや、販売に向けたサポートを行います。

そのうちのひとり、格闘ゲームを制作しているクリーエーターのナカミチヨシアキさんです。
ナカミチヨシアキさん
戦うキャラクターは、孫から祖父母までの家族同士。

食卓に出されたからあげに、レモンをかけるのかマヨネーズをかけるのかを巡ってバトルを繰り広げるという内容です。
レモンの先にあるのは・・・『FAMILY BATTLE タッグアリーナ』
このユニークな設定は、マンガを担当していた編集者との打ち合わせのなかで生まれました。

これまで苦手としていたゲームの「見せ方」について、編集者から貴重なアドバイスをもらっているといいます。
編集者と打ち合わせするナカミチヨシアキさん(画面左)
ナカミチヨシアキさん
「いままでいろんな漫画の編集をしてきた方なので、作品を手に取らせる方法から、どういうものが面白そうと思ってもらえるかというところまで、めちゃくちゃ詳しいんですよね。編集者という仕事でイメージしていたとおり、本当に引き出してくれる感じですね」
これまで、漫画や小説の分野で表現者たちの才能を引き出してきた出版社が、蓄積してきたノウハウを生かし、そのフィールドをゲームの世界に広げようとしています。
講談社クリエイターズラボ 鈴木隆介さん
「一番才能ある人たちはどこにいるんだろうというのをずっと探していて、今はゲームに多くの才能が眠っているんじゃないかと。であれば、クリエーターを支援してきたわれわれ講談社がゲーム事業に参入するというのは、非常に自然な流れかなと思っています」

これからゲームはどこに向かうのか

映像や音楽、シナリオ、それにインタラクティブな体験までも兼ね備えているゲームは、そのエンターテインメント性だけでなく、芸術表現としても大きな魅力です。

その中心にいるのは、ゲーム制作を粘土遊びと変わらないと語る中学生の宮城さんや、ゲームならではの表現を模索する「ところにょり」さんのような新たな才能たち。

“新たな世界”を創り上げたいという多くのクリエーターが、表現の場として、真っ先に選び取ろうとしているゲームは、かつての演劇や映画のように「総合芸術」として、より発展していくに違いありません。

その変化の行く先を、これからも取材し続けたいと思います。

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科学文化部記者

加川直央

学生時代はバンドに明け暮れ、就職活動で見事に全敗。

あまりに世間知らずだったことに愕然として逆方向に針が振れ、ギターをペンに持ち替えて記者を目指す。

Webメディアやデータジャーナリズムの台頭を目の当たりにする中、動画の可能性を感じて2015年にNHK入局。

初任地の京都では、漫画やアニメの原画、レトロゲームの保存と継承の問題について取材。ファミコンの開発責任者だったレジェンド、上村雅之さんにインタビューしたことが良き思い出。

科学文化部では、主に映画とITを担当。これまでに濱口竜介監督の演出論や、クリエイターを支援する”NFT”の特集などを制作。

ものづくりする人が楽しく暮らせる社会を目指して取材中。

メディアの未来と文化全般に関心があり、好きなものはSF小説とお笑い芸人のラジオとTwitterの炎上ウォッチ。

隙あらばゲームをしています。現在の推しバンドは家主。

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記事の内容は作成当時のものです

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