審査対象の11人が
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2021年6月23日決定「夫婦別姓」認めないのは
 憲法違反か

どんな
裁判か

  • 夫婦が別々の姓にすることを認めない民法の規定が憲法に違反するかどうかを審理
  • 15人の裁判官全員による大法廷で審理 憲法違反ではないと判断
  • 15人のうち11人が「合憲」(うち3人が補足意見)、4人が「違憲」と判断

東京都内の3組の事実婚の夫婦は、別姓での婚姻届を受理してほしいと審判を申し立て、別姓を認めない民法と戸籍法の規定は男女の平等などを定めた憲法に違反すると主張しました。

夫婦別姓をめぐって最高裁大法廷は6年前(2015年)に憲法違反ではないと判断しています。決定は「6年前の判決後の社会の変化や国民の意識の変化といった事情を踏まえても憲法に違反しないという判断を変更すべきとは認められない」と指摘。夫婦は同じ名字にするという民法の規定は憲法に違反しないとする判断を示しました。また、「どのような制度をとるのが妥当かという問題と、憲法違反かどうかを裁判で審査する問題とは次元が異なる。制度のあり方は国会で議論され、判断されるべきだ」として、申し立てを退けました。15人の裁判官のうち合憲としたのは11人(うち3人が補足意見)、違憲としたのは4人でした。

明治以来続く“夫婦同姓”

夫婦別姓を認めず、夫婦は同じ名字にするという制度は、明治31年の1898年から120年あまり続いています。法務省によりますと一般の人たちが名字の使用を始めた明治初期には、夫婦がそれぞれの名字を使う「夫婦別姓」の制度だった時期もありましたが、明治31年の1898年に当時の民法が制定された際に「家制度」が導入され、夫婦はともに同じ「家」の名字にするという制度に改められました。
戦後の1947年の民法改正で、「夫婦は婚姻の際に、定めるところに従い夫または妻の氏を称する」と定められ、夫婦は、夫か妻の名字を選べるようになりましたが、「夫婦は同じ名字にする」という家制度の仕組みは維持され、現在に至っています。
一方、夫婦がともに同じ名字にするか、希望すれば結婚前の別々の名字にするかを選べる「選択的夫婦別姓」を求める声が高まり、1996年に法務省の法制審議会が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法の改正案を答申しましたが、国会議員の間で強い反対意見もあり、実現しませんでした。

この裁判についての最高裁判所の資料はこちら(NHKサイトを離れます)

審査対象の裁判官たちの判断は

  • 深山 卓也

    合憲 補足意見あり

    国民の意識の変化については、国会で評価、判断されることが原則だ。しかし、選択的夫婦別姓の導入が、今そのような状況にあるとはいえず、女性の有業率の上昇など社会の変化と併せて考えても、規定が憲法に反する状態になったとは言いがたい。選択的夫婦別姓の導入をめぐる最近の議論の高まりについてもまずは国会で受け止めるべきで、国会で国民の意見や社会の変化を十分に踏まえ、真摯な議論が行われることを期待する。
    (深山・岡村・長嶺裁判官は同じ補足意見)

  • 岡村 和美

    合憲 補足意見あり

    国民の意識の変化については、国会で評価、判断されることが原則だ。しかし、選択的夫婦別姓の導入が、今そのような状況にあるとはいえず、女性の有業率の上昇など社会の変化と併せて考えても、規定が憲法に反する状態になったとは言いがたい。選択的夫婦別姓の導入をめぐる最近の議論の高まりについてもまずは国会で受け止めるべきで、国会で国民の意見や社会の変化を十分に踏まえ、真摯な議論が行われることを期待する。
    (深山・岡村・長嶺裁判官は同じ補足意見)

  • 長嶺 安政

    合憲 補足意見あり

    国民の意識の変化については、国会で評価、判断されることが原則だ。しかし、選択的夫婦別姓の導入が、今そのような状況にあるとはいえず、女性の有業率の上昇など社会の変化と併せて考えても、規定が憲法に反する状態になったとは言いがたい。選択的夫婦別姓の導入をめぐる最近の議論の高まりについてもまずは国会で受け止めるべきで、国会で国民の意見や社会の変化を十分に踏まえ、真摯な議論が行われることを期待する。
    (深山・岡村・長嶺裁判官は同じ補足意見)

  • 林 道晴

    合憲

  • 三浦 守

    違憲だが結論は同じ

    夫婦の名字を同じにする現在の制度は現実的に女性に不利益を与えている。夫婦別姓の選択肢がないことは婚姻の自由を不合理に制約していて憲法に違反する。しかし、法律の定めがないまま解釈によって夫婦が称する名字を書いていない届け出を受理することはできない。

  • 草野 耕一

    違憲

    選択的夫婦別姓を導入することによって向上する国民の利益は、減少する利益よりはるかに大きいことは明白だ。それにもかかわらず導入しないことは、あまりにも個人の尊厳をないがしろにしている。

  • 宇賀 克也

    違憲

    夫婦の名字を同じにしないと結婚を法的に認めないという制約を課すのは合理性がない。婚姻の自由と夫婦の平等を保障した憲法の趣旨に反し、不当な国家介入にあたる。6年前の判決後、旧姓の通称使用が拡大し、国の機関の公的文書でさえ認められるようになったことは重大な事情の変化だ。通称使用を認めることは、夫婦同姓が不合理だと認めることにほかならない。

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