追跡 記者のノートから上智大生殺害から25年 遺族に寄せられた新証言

2021年9月7日事件

1996年に東京・葛飾区の住宅で上智大学の学生、小林順子さん(じゅんこ)が殺害され放火された事件は、未解決のまま9月9日に25年になります。

大学で英語を学び、念願だったアメリカ留学に旅立つわずか2日前に突然命を絶たれた小林さん。

警視庁は遺族にもたらされた新しい情報をもとに不審人物の新たな似顔絵を作成、情報の提供を呼びかけています。

留学2日前に

1996年9月9日、東京・葛飾区の住宅で、上智大学に通っていた小林順子さん(当時21)が何者かに刃物で殺害され、自宅が放火されました。

現場からは犯人のものとみられるA型の血液やDNAが検出されています。

大学で英語を学んでいた順子さん、事件が起きたのは念願だったアメリカ留学に旅立つわずか2日前のことでした。

父親の賢二さんは、今もあるものを大切に保管しています。

2015年に取材

順子さんがアメリカの留学先に送っていた荷物です。

事件の後、手元に戻ってきました。

中に詰められた荷物、これを見るたびに賢二さんは思うことがあるといいます。

父親 賢二さん
「これを履いてシアトルの街を闊歩していたのかな、とか想像します。荷造りをしたときには希望もあり、期待もあり、ちょっぴり不安な気持ちも入り混じった、そんな気持ちでこの荷物を作ったんだろうなとか、いろいろ考えさせられます」

新たな証言

賢二さんは事件のあと自宅の跡地に娘の名前をつけた「順子地蔵」を置いて解決を願っています。

この地蔵の前に去年賢二さんがいたところ、事件当時現場近くに住んでいたという女性に声をかけられて、不審な男を目撃していたという新たな目撃情報について打ち明けられたそうです。

父親 賢二さん
「事件発生からかなり時間がたっているのにこのような情報があるとは驚きました。これまでも情報提供を呼びかける活動を続けてきましたが、今回新たな情報が寄せられたことで、まだまだ埋没した目撃情報はあるんだと確信できました。

私はずっと目撃者はもっと他にいるはずだという思いを持っていました。『やっぱり、あったか』という思いと、『決して諦めない』という思いを新たにしました」

この情報はすぐに捜査本部にも伝えられ、女性の目撃情報が詳細で具体的だったため、警視庁は犯人につながる可能性があるとして新たに似顔絵を作成しました。

警視庁が新たに作成した似顔絵

新たな証言では事件が起きる少し前の時間帯に現場から15メートルほど離れた路上で、不審な人物が目撃されていました。

当時、小雨が降っていて黒い傘をさして体型に合っていない大きめの黄土色のコートを着て黒のズボンをはいていたということです。

▽年齢は50歳から60歳くらい
▽身長は1メートル50センチから60センチほど、
▽やせ型のつり目だったということです。

警視庁捜査一課 野邊隆之管理官
「25年間も犯人逮捕の報告ができていないということは大変申し訳なく思っていますが、一方でこういった形で25年たっても新たな情報があるということはとてもありがたいです。

私たちは、事件を解決する使命を託された最後の砦として、決して諦めずに捜査を続けていかなければと思っています。必ず、被害者とご遺族の無念をはらしたいと考えており、どんなささいな情報でも寄せてほしいです」

父親の賢二さんは、これまで現場近くの駅などで情報提供を呼びかける活動を続けてきました。

2018年9月

父親 賢二さん
「無限の可能性があった娘の命を絶った犯人には自首してほしい。『犯人が捕まるように頑張っていろんな努力をしているから、順子も応援してね』といつも心の中で呼びかけています」

警視庁は新たに作成した似顔絵も使って捜査を続けています。
事件に関する情報は亀有警察署の捜査本部、電話03-3607-0110や警視庁のホームページで受け付けています。

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