オーストラリアは資源が豊富で、日本にとって石炭や鉄鉱石などの調達先として重要な国です。そのオーストラリアとの経済関係をさらに強固なものにしようという動きが進んでいます。
なぜ今、日本にとってオーストラリアとの関係の重要性が増しているのでしょうか?オーストラリアのメルボルンで9日から2日間にわたって開かれた、日豪の経済界の代表らによる会議「日豪経済合同委員会会議」を神子田章博キャスターが取材しました。
日豪関係強化 経済界に期待感
この会議は両国のビジネスのつながりを強めようというもので、ことしで60回目を迎えます。日豪経済委員会の広瀬道明委員長は会議で次のように述べました。
日豪経済委員会 広瀬道明 委員長
「鉱物資源・エネルギー・食料とともに、防衛・教育・観光産業やスタートアップのイノベーション、幅広い分野において日本にとって豪州はなくてはならない、そういう存在になっている」
オーストラリアのアルバニージー首相もみずからメッセージを寄せ、このイベントへの期待を示しました。
オーストラリア アルバニージー首相
「どのような状況下にあろうとも、私たちの関係は信頼と尊敬と絶大な可能性を伴ったものだ」
背景に「中国の存在」
ここへきて二国間の重要性が増している背景には、中国の存在があります。
日本もオーストラリアもともに海に囲まれた海洋国家ですが、いま中国が太平洋からインド洋にかけての海洋進出を強めている中で、両国はアメリカやインドとの間で、中国に対する包囲網とも言われる枠組み「クアッド」をつくり、安全保障や経済の分野での協力関係を強めようとしています。
西村康稔 経済産業相
「オーストラリアは日本にとって、特に重要鉱物について特定国に依存しないサプライチェーンをつくっていくということで、その構築のうえでも最も重要なパートナー」
重要鉱物・エネルギー… 豪州への期待
メルボルンでの日豪経済合同委員会会議の全体会議では、AI=人工知能などIT機器の活用が広がる中で、必要となる電力をどう確保するか、脱炭素とどう両立するかなどについて議論が交わされました。
この中で、日本側からは脱炭素を進めるにあたっては、企業の競争力を維持するという現実的な視点も必要だという意見が出ました。
またオーストラリア側からは、EV=電気自動車の生産に必要な重要鉱物を巡って日本との協力が必要だと言う指摘が出ていました。
日本側がオーストラリア側に期待するポイントは何か。出席したNTTの澤田純会長は、取材に対し次のように述べました。
NTT 澤田純 会長
「燃料や安定的なミネラル(重要鉱物)にしても関係を継続するということと、新しいエネルギー、GX=グリーン(トランスフォーメーション)に向けての技術開発を一緒にする。そういう広がりをトライする」
また三菱商事の中西勝也社長は、取材に次のように述べました。
三菱商事 中西勝也 社長
「(オーストラリアのような)価値観の共有できる国と関係を深化させていかないと、本当に何か有事が起きた時にサプライチェーンがズタズタになってしまう。特にエネルギー源はすべての産業のベースなので、そこは安全保障上も絶対大事なことだと思う」
補い合い経済成長を求める声
一方、オーストラリア側が日本側に期待するポイントは何か。オーストラリアには豊富な資源などの強みがあり、日本には技術力などの強みがあります。それを補う形での関係の強化に期待を抱いているようです。
オーストラリア側の参加者の一人は、取材に次のように答えました。
オーストラリア側の参加者の一人
「オーストラリアの強みが日本にとって利益となり、日本の強みがオーストラリアにとって利益になる。したがって私たちが提携すれば、相互に経済成長のチャンスがあると思っている」
スタートアップ相互進出へ 情報を得られる環境づくりを
また分科会では、日豪のスタートアップ企業がお互いの国にどう進出していくかなどについて、専門家が意見を交わしました。
この中では、双方のスタートアップ企業がお互いの国に進出するのに消極的になっているという見方が示されました。そうした中で、相手の市場やビジネスの環境について情報を得られる環境づくりが必要だという指摘が相次ぎました。
日本側の登壇者
「日本のスタートアップ企業がオーストラリアの強みを理解すれば、オーストラリアがよい選択肢になり、進出する機会がさらに増えると思う」
オーストラリア側の登壇者
「オーストラリアのスタートアップ企業にとって日本が選択肢になることを啓発していくことが重要。みずからにないものを補う技術が日本にあり、それが組み合わさることで、何かのマジックが生まれることになるだろう」
参加したオーストラリアのスタートアップ企業は、取材に対し次のように話しました。
オーストラリアのスタートアップ企業
「スタートアップ企業は時間も資本も限られているので、日本市場に参入するのは簡単ではない。きょうの会議はとても役に立った」
オーストラリアは日本と時差による昼夜の逆転がないこともあり、ビジネスのやりやすさから日本市場に関心を示している企業もあるようです。
このほか会議では、グローバルな課題である脱炭素の取り組みについてもテーマに取り上げられました。
オーストラリアは世界有数の石炭の産出国でありながら、いま脱炭素の取り組みが急速に進んでいます。10月19日(木)、20日(金)の「おはBiz」でお伝えする予定です。
【2023年10月13日放送】
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