LNGクライシス 日本の液化天然ガス調達はどうなる?

電力不足が問題となる中、日本が火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスの確保に苦慮しています。

世界各国からLNGを調達してきた日本。ロシアの軍事侵攻を受けて、これまで通りの確保が難しくなっていて、官民が安定した調達を探っています。

トップクラスの産出国カタール 輸入交渉の行方は

カタールの天然ガスプラント

世界トップクラスのLNG産出量を誇るカタール。経済産業省資源エネルギー庁の課長の早田豪さんは6月、カタール最大の国営エネルギー企業を訪ね、輸入に向けた交渉を行いました。

資源エネルギー庁 早田豪課長
「ドイツやイタリア、中国、韓国もみんなカタールのLNGを獲得するべく交渉に来ているが、われわれ日本としてもそこは負けられない」

もともと日本企業は25年にわたる長期契約を結んでカタールからLNGを輸入してきました。しかし脱炭素が進む中で、燃やすと炭素を排出するLNGは長期的に需要が減るという見通しもあることから、2021年の暮れ、一部の大型の契約を更新しませんでした。

ところがいまLNGの確保が急務となり、国が前面に出て交渉に動いています。

カタール国営企業との交渉に臨む早田課長

取材した日、早田さんは、カタールの国営エネルギー企業と1時間にわたって新たにLNGを輸入する契約の可能性を探りました。

相手からは「対話の用意はある」という回答を引き出しましたが、厳しい言葉も出たといいます。

資源エネルギー庁 早田課長
「何故に長期契約を結ばなかったのかということについて、まだ納得していない感じだった。日本だけ特別扱いするわけにはいかないということだと思う」

日本としては今後も経済協力を提案しながら交渉を続けていくとしています。

新たなガス田開発計画 脱炭素とどう両立

こうした中、天然ガスの増産を目指す日本企業の動きも出てきています。

オーストラリアにあるLNGプラントを手がける日本最大の石油・天然ガス開発企業「INPEX」は、新たにガス田を探し当て開発する計画を進めています。

みずから開発することで安定的な調達が可能になりますが、大きな課題も伴います。
一般的にガス田の開発にかかる費用は10~20年にわたり数兆円に上ることもあります。脱炭素の潮流の中でLNGが敬遠されてしまうことになれば、開発コストが回収できないおそれも出てくるのです。

そこでこの会社が進めているのが、生産時に排出される二酸化炭素を地中に埋める技術の導入です。これによって長期的な脱炭素と当面の安定供給の両立を図ろうとしています。

石油・天然ガス開発企業 上田隆之社長
「気候変動に対応していくのは不可欠です。その一方でエネルギーのセキュリティーという問題が着目されてきたので、どう調和させていくのかが、われわれの課題」

脱炭素は進めなければならない一方、エネルギーは安定して調達しなければならず対応は簡単ではなさそうです。

日本は二酸化炭素を地中に埋めるなど環境関連技術に強みがあり、これを安定調達に向けた交渉のてこにしたいと考えているようです。
【2022年9月2日放送】
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