ENEOS・齊藤猛新社長が描く未来 脱炭素・脱ロシアで変わる石油業界

石油元売り最大手ENEOSホールディングスの新社長に4月、齊藤猛さん(59)が就任しました。6月6日にはEV=電気自動車の普及を見据えて全国4000基に上る充電ネットワークの運営権をNECから取得し、系列のガソリンスタンドに充電ネットワークを広げていくほか、急速充電器の整備を進めるなど充電ビジネスを強化すると発表しました。

石油業界は「脱炭素」のかつてない変革期を迎えています。さらにロシアによるウクライナ侵攻で「脱ロシア」も迫られることになりました。今後の戦略を齊藤社長に聞きました。

迫られる脱炭素・脱ロシア

ロシアによる軍事侵攻に対してG7・主要7か国は相次いで経済制裁を発動。ロシア産石油の禁輸を打ち出しました。齊藤社長も就任早々、脱ロシアへとかじを切りました。

齊藤猛社長
「ロシアがウクライナ侵攻を始めた時点でレピュテーション(評判)リスクなどがあった。4月をもって契約を切ったというか、やめている」

国際社会は今、脱炭素の実現に向けて大きく動き出しています。齊藤社長は、石油に依存した経済や社会を支える役目を果たしながら、いかに脱炭素を図るか難しさを感じています。

「138年続いている同じビジネス。(石油は)エネルギー密度が高い、総合してみると便利なエネルギーだった。脱炭素は進んでいく。再生可能エネルギーは当然(比率が)高くなっていくし、低くなっていくのが石油。それがまったくゼロになるかというと、エネルギー安全保障の考え方からするとそれは少し不安であるということになると、われわれはそこで下支えをしていく」

ガソリン供給だけでない「サービスステーション」へ

石油ビジネスはすぐになくなるわけではありません。では、身近なガソリンスタンドの未来はどうなるのでしょうか?

齊藤社長は、ガソリンや電気などのエネルギーを供給するだけではなく、宅配ロボットを使った物流拠点や医療の拠点などにしていきたいと考えています。

「ガソリンステーションと呼ばない、サービスステーションだと。お住まいになられている方の生活のお困りごと、必要なもの、もしくは楽しむ、愉快な場所だと思えるような可能性を探っていきたい」

次世代エネルギー・水素を「大量に安く」

本格的な次世代エネルギーへの転換の準備も進めています。特に力を入れているのが水素です。

製造過程でも二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンな水素を安く調達することが、事業拡大のカギだと考えています。

「CO2フリー水素をいかに大量に、いかに安く調達するかがキーになってくる。単価を下げていくと、車の世界でも一般消費者が買われる値段になる。移動のエネルギーは、経済合理性はいちばん優先される条件かなと思うので、これからもその可能性を探っていくことになる」

脱炭素、次世代エネルギー・水素への転換というビジョンをどう具体化していくか、手腕が問われます。
(経済部 記者 佐々木悠介)
【2022年6月7日放送】