タイでSAF生産 廃油からサトウキビから

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「SAF」とは、Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)のことです。使用済みの油などを原料にしていて二酸化炭素の排出量を大幅に減らせるとされ、注目されています

東南アジアのタイでは、一般の家庭から出る使用済みの油も利用してSAFを作ろうという動きが始まっています。

屋台の使用済み油 エネルギー大手が回収

バンコクの屋台で人気のバナナを揚げたおやつ。タイではこれまで、こうした屋台で発生する大量の使用済みの油は、改修の仕組みが十分に整っていなかったため下水道などに不適切に捨てられるケースも後を絶たず、環境汚染などにつながると指摘されてきました。

タイのエネルギー大手企業「バンチャーク」はこうした油を回収しています。不純物を取り除いて精製することにより、「SAF」として利用しようとしています。

ある屋台の店主は次のように話しました。

家庭の廃油も ガソリンスタンドで買い取り

一般家庭から出る油の回収も進んでいます。エネルギー大手は、運営するガソリンスタンド160か所余りで油の買い取りを始めました。

集めた油を使って、建設中のSAFのプラントで2025年から製造を始める計画です。

タイのエネルギー大手企業 タマラート・パリョンスク上席副社長
私たちは1日に100万リットルを超える量のSAFの生産ができるよう、これからもさらに原料を探し求めていく。環境や社会と持続的で調和がとれた形でビジネスをしていきたい

SAF生産量 2030年には34倍に?

こうした取り組みが進む背景には、世界的な環境規制の強化があります。EU=ヨーロッパ連合は2025年に、シンガポールは2026年に、域内や国内の航空機に対しSAFの使用を義務化します。

SAFの生産量は2030年に5100万トン(IATA予測)と、2024年の150万トンから34倍になると推定されています

日本企業も本格参入 サトウキビの搾りかすからSAF原料

こうした動きに日本企業も本格参入しようとしています。繊維メーカーの「東レ」のタイ法人は、これまで廃棄されてきたサトウキビの搾りかすを有効活用して、航空燃料の原料などとして生まれ変わらせようとしています。

サトウキビの搾りかす
現地の工場

タイは世界でも有数のサトウキビの生産地です。砂糖の製造過程で出る搾りかすはこれまで主に燃やされていましたが、焼却処理すると二酸化炭素の排出量が増えることが課題でした。

この繊維メーカーによると、開発した特殊な膜を使った装置で、筒状の部分に搾りかすを入れると、SAFの原料となるセルロース糖を取り出すことができるといいます。

セルロース糖を取り出す装置
糖を濃縮するための膜

専用の酵素で搾りかすを溶かし、複数の特殊な膜でろ過すると、不純物などが順番に取り除かれ純度の高いセルロース糖だけが残る仕組みです。

2023年までに実証実験を終えていて、今後は年間、最大で2000トンのセルロース糖の生産を目指します。

日本の繊維メーカー タイ法人 木村将弘 代表
(タイは)もともと砂糖をつくるのが主な産業の一つ。燃やされているモノから有価物をとるという循環社会への貢献というのもあるので、この技術を世の中にたくさん普及できるようにがんばっていきたい

(アジア総局 加藤ニール)
【2024年6月20日放送】