芝田浩二・ANAホールディングス新社長が語る復活の鍵

ANAホールディングスの新社長に4月、芝田浩二さんが就任します。新型コロナの影響で厳しい経営が続く中、復活の道をどう描いているのでしょうか。
 

海外出張700回 社内きっての「国際派」

2年連続の赤字の見通しとなっているANAホールディングス。まず、どのように黒字化していこうと考えているのか聞きました。

芝田浩二新社長

「コロナの波を乗り切っていくんだということで、全社一丸となって事業構造改革、コスト削減に取り組んできた。今後は回復需要をどうやって私どもで拾っていけるか、摘み取っていけるか。これが黒字化の大きなファクターになっていくと思う」

芝田さんは鹿児島県の離島・加計呂麻島の出身です。外国と行き来する船を間近に眺めて育ったことで海外に強い憧れを抱き、全日空に入社しました。

入社後もヨーロッパ駐在を経験するなど社内きっての「国際派」と呼ばれてきました。これまでの海外出張は約700回に及ぶといいます。

中距離路線に新ブランド 回復需要「すべて取る」

芝田さんがANA復活のカギと位置づけているのが国際線です。コロナ後の需要回復を見越して、新ブランド「エアージャパン」の立ち上げを3月に発表しました。

ANAホールディングスには今、2つのブランドがあります。アメリカやヨーロッパなど長距離を結ぶ「ANA」と、中国や台湾など近距離を得意とするLCC(格安航空会社)の「ピーチ」です。

そして今回3つ目のブランドとして、東南アジアやオセアニアなどの中距離路線に「エアージャパン」を投入します。

機内の居住性にこだわりつつ価格をLCC並みに抑えることで、ビジネスと観光の双方の需要を取り込むねらいです。

芝田新社長

「需要は必ず戻る。特に東南アジア・アジア・オセアニア、ここを含めたマーケットは注視していきたい」

「そこのマーケットに対応するための機材、あるいはブランド、サービス、ここはしっかり確保する必要がある判断したので、そこに新しく三の矢、3つ目の武器を用意した。この3つのブランドで回復需要をすべて取っていく。取りこぼさないという覚悟を持ってやっていきたい」

コロナ後にらみ「メタバース」事業立ち上げ目指す

さらに新たな一手として掲げているのが、仮想空間で旅行体験や買い物などができる「メタバース」です。2022年中に事業を立ち上げることを目指します。

海外の新たな顧客を獲得し、コロナ後の航空需要の開拓にもつながるとにらんでいます。

芝田新社長

「メタバースを見て『日本に行って桜を見たい』とか『日本に行って京都に行ってみたい』とか、そうなるといまマイレージ会員が3700万人という数字だが、外国の方がこの経済圏の中に加わるとこれが5000万になり1億人になる。これは全く夢ではないと思っている」

「こういった新規事業の種まきはもう終わっているので、それぞれの事業領域でそれぞれの会社が個別に成長していく。グループ全体の底上げにつながっていくと思う」

離島出身の芝田さんは「島ではお互い寄り添って生きてきた。企業も同じ。互いを尊重する気持ちを大切にしてグループ全体の力の結集につなげたい」とも話していました。

企業のトップとして人を思いやる気持ちを大切にしながら、社員に対して分かりやすいメッセージを込めたビジョンを示していきたいということでした。

(解説委員 神子田章博、経済部 記者 真方健太朗)

【2022年3月24日放送】