半導体大競争時代② 日本の勝機は?

かつて日本は“半導体王国”とも言われ世界をリードしてきましたが、世界シェアの低下からもその凋落ぶりは明らかです。

かつての栄光を知る研究者が今、再生に向け動き出しています。巻き返しへの3つのカギとは?

消費電力削減へ「3D化」目指す

黒田忠広教授

東京大学大学院の黒田忠広教授は、国内企業10社余りとともに新たな半導体の開発に乗り出しています。目指すのは半導体の3D化です。

現在の半導体は平面に並べて配置されています。その間を電気信号が行き来することで情報をやりとりします。

これを縦に積み重ねるのが3D化です。電気信号の移動距離が短くなり、処理速度がアップ。消費電力が半分に抑えられるといいます。

東京大学大学院 黒田忠広教授
「いちばん大きいのは電力の消費が減ること。3D(半導体)なくして、これからのAIあるいはデジタル社会というのはつくることができない」

海外トップ企業と共同研究を

黒田教授は1980年代に東芝に入社して以来、日本の半導体産業を見つめ続けてきました。日本の半導体を再生するには、海外の力をうまく取り入れることが重要だと考えています。

黒田教授の呼びかけで、台湾の「TSMC」との交流会がこのほど茨城県つくば市で実現しました。半導体関連企業およそ40社が出席しました。

TSMCは他社から注文を受けて半導体を製造する受託生産で世界トップの企業です。参加した企業は、2022年にできたTSMCの研究所について説明を受けました。

茨城県つくば市にできたTSMCの研究所

黒田教授は世界のトップ企業との共同研究を促し、3D化を含めた日本の技術の向上を図りたいと考えています。

黒田教授
「(半導体)技術がますます複雑になっていくので、1つの会社だけ1つの国だけでは技術をつくっていくことが難しい。とても大切なのは日本の技術で世界に貢献するということ」

人材育成で未来をつくる

さらに海外との連携が欠かせないと考えているのが人材育成です。黒田教授たちは、学生を対象にした半導体設計のセミナーを企画しました。

セミナーではIT大手グーグルのエンジニアが、誰でもチップをつくれるようになることを「ミッション」として、およそ50人の学生に半導体の設計を指導しました。じかに触れることで少しでも興味を持ってもらうのがねらいです。

IT大手のエンジニア

参加した学生の1人は「シミュレーションを使って銀河の研究をしている。自分に合った半導体を必要な時につくれるような技術を身につけたい」と話しました。

黒田教授
「多くの人が半導体に興味を持って、自分のアイデアで未来を形づくることに参加してくる。そこにいろんなイノベーションが起こる土壌ができるんじゃないか」

省エネにつながるという3D化は、エネルギーの調達が難しくなると予想される中で社会から求められる研究開発分野だとみられます。専門以外の学生も半導体の世界を知り、すそ野が広がることで日本の技術レベルが上がって、巻き返しにつながることが期待されます。
【2023年1月27日放送】
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