半導体大競争時代③ 日本の“強み”を結集

次世代の産業の肝になる半導体ですが、日本のシェアは大きく低下しています。

ただ、半導体の土台となるシリコンウエハーなどの「素材」や、電子回路を組み込んだり洗浄したりする「製造装置」は日本が今も強い分野です。この強みを、“連合”を組むことでさらに伸ばそうという取り組みが始まっています。

日本が強い素材分野

化学メーカー「レゾナック」の茨城県筑西市の生産拠点では今、世界的な半導体の需要の高まりを受け、設備投資を急いでいます。

このメーカーは、半導体を乗せる基盤の素材「銅張積層板(どうばりせきそうばん)」の売り上げで世界シェアトップの4割を占めています。

半導体を乗せる基盤の素材

メーカーは半導体事業に集中投資し、研究開発や生産設備に今後およそ2500億円を投じる計画です。

化学メーカー 真岡朋光 最高戦略責任者
「テクノロジー企業はアメリカ企業であったり中国企業であったり、こういった企業が世界を席巻するのが昨今目立ってきているが、日本企業が世界でどのように闘うか。こういった絵を示す」

次世代半導体見据え 素材・装置など12社が共同研究

日本の強みをさらに伸ばそうと進めているのが、会社の垣根を越えた共同研究プロジェクト「JOINT2」です。

次世代の半導体の製造に必要な技術開発を加速させるため、素材や装置メーカーなど12社が結集。国立研究開発法人のNEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成金も得ました。

「JOINT2」のために新設したクリーンルーム(川崎市)

共同で取り組む一つが、チップとチップを接合させる微細な金属端子の開発です。

黄色い四角の中の白い点の1つ1つが、幅10ミクロン=100分の1ミリの微細な金属端子。青い四角内は拡大図

複数のチップが連動する次世代半導体は、いかに精密に端子どうしを接合するかがカギになります。互いのアイデアを持ち寄り、素材の割合や製造方法を見直すことで、より微細かつ安定した端子を作ろうとしています。

プロジェクトに参画する素材メーカー「上村工業」 担当者
「まだまだ始まったところ。第1ステップがクリアできた」

プロジェクトに参画する素材メーカー「東京応化工業」 担当者
「業界全体として盛り上がるのではないか」

タッグ組み“逆提案”も

半導体を製品化するためのこうした技術開発はこれまで半導体メーカーなどがリードして行い、必ずしも素材や装置メーカーどうしではノウハウが共有されてこなかったといいます。

そこでプロジェクトでは、半導体メーカーに素材や装置を納める立場にとどまらず、逆に提案していきたいと考えています。

レゾナック エレクトロニクス事業本部 阿部秀則 開発センター長
「エンジニアどうしの議論、インスピレーションが生まれて、新たなアイデアにつながる。日本の強みを結集し、開発を加速させていくために必要」

日本の素材メーカーや装置メーカーはこれまで、それぞれが半導体メーカーと1対1でやりとりをしてきました。いわば“受け身”の部分がありましたが、横のつながりを持つことで攻めに転じ、新たな領域に踏み出そうとする動きが注目されます。
(政経・国際番組部 佐川豪)
【2023年2月7日放送】
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