「ナノテラス」に企業が熱視線 100万分の1ミリの世界にビジネスチャンス?

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仙台市に4月、原子や分子など極めて小さな世界を見ることができる世界最先端の研究施設ナノテラス」がオープンしました。この施設に、企業の熱い視線が注がれています。

上空から見たナノテラス
その内部

巨大顕微鏡「ナノテラス」の仕組みとは

ナノテラスは「巨大な顕微鏡」とも呼ばれています。国や地元の自治体、経済界などが約380億円をかけて整備しました。

ナノテラスを上から見た図を使って、その仕組みを見てみましょう。直線の加速器から生み出される、ほぼ光の速度の電子が、1周349メートルの円形の施設を回ります。

直線の加速器から、ほぼ光の速度の電子が生み出され…
1周349メートルの円形の施設を回って…

その電子を、施設に備わった磁石で曲げると、太陽の10億倍明るい光が発生します。

その極めて強い光で、分析したい物質を照らすと、ナノ=100万分の1ミリという小さな世界まで、物質の表面の状態や詳しい構造を見ることができるのです。

例えば、磁石を照らすと…

「青系と赤系がNとSになっている」
めんのデンプンも拡大

企業と研究者 マッチングして利用

ナノテラスは、大企業や大学に加えて研究開発の経験が少ない中小企業が気軽に利用できるのが特徴です。

その秘密が、製品開発したい企業と、解析などの技術を磨きたい研究者とをマッチングして共同で利用してもらう仕組みです。約150の企業などが利用する予定です。

研磨技術で世界トップ級の企業 ナノテラスをどう活用?

宮城県利府町の精密部品の加工会社「ティ・ディ・シー」も、マッチングの仕組みを使ってナノテラスを利用する企業の一つです。

この会社は従業員約70人で、世界トップレベルと言われる研磨技術があります。その製品は半導体や宇宙関連などの分野で活用されています。

研磨技術は宇宙関連などの分野で活用されている

この会社はナノテラスを使って金属の表面を見ようとしています。これまでは金属を研磨しやすいよう化学薬品を使っていましたが、化学薬品の代わりに目に見えない小さな泡を使って酸化させるとどうなるのか確認したいと考えたのです。

取材した日は、ナノテラスで実験を行った分析結果が出ました。赤羽優子社長が、共同研究する東北大学の国際放射光イノベーション・スマート研究センターの虻川匡司教授から結果を聞きました。

虻川教授は「鉄の場合は酸化して酸化膜が見える、アルミの場合も酸化膜が厚くなる」などと説明し、鉄とアルミニウムで効果がありそうだと分かりました。今後も実験を繰り返し、実用化を検討することにしています。

虻川教授(左)から説明を受ける赤羽社長

精密部品の加工会社 赤羽優子 社長
一般的にはアプローチできなかったような計測手法に、私たちも気軽にチャレンジすることができるので、自分たちの技術、これまで頑張って来た技術の価値も高めていくことができると思っている

一般社団法人 光化学イノベーションセンター 高田昌樹 理事長
日本の科学技術を大きく変えていく。そういう始まりがここから出てくると考えている

隣接地に「サイエンスパーク」構想も

ナノテラスと隣接する敷地では、企業の研究開発拠点や、スタートアップを集積させる「サイエンスパーク」の構想が進められているということで、企業の注目度はますます高くなりそうです。
(仙台局 内山太介)
【2024年5月7日放送】