【画像を選択すると動画をご覧いただけます】
原油価格の高騰や円安などの影響で、家畜の餌となる牧草の輸入価格が高騰しています。古くから「闘牛の島」として知られる鹿児島県徳之島は肉用牛の繁殖も盛んで、これまで捨てられていた“サトウキビの葉”を飼料に使う取り組みが始まりました。
原油高騰に円安…輸入飼料8年前の2倍近くに
徳之島では1万2000頭を超える繁殖用の母牛が飼育されています。しかし今、牛の餌となる牧草の輸入価格が高騰し、畜産農家の経営を圧迫しています。原油価格の高騰や円安などの影響で、8年前の2倍近くになっているのです。
150頭の牛を飼育している畜産農家の基山初男さんは、次のように話しました。
畜産農家 基山初男さん
「ウクライナの戦争の影響がいちばん響いている。今どうなるかなという心配がいちばんです」
サトウキビの葉を飼料に ウィンウィンの仕組みとは
そこで鹿児島県が対策に乗り出しました。目をつけたのは、徳之島の特産・サトウキビです。サトウキビの葉はこれまで収穫後に畑に捨てられていましたが、牧草の代わりにできないかと考えました。
成分を分析してみると、栄養分は牧草とほとんど変わらないことが判明しました。
サトウキビの葉を飼料に使う仕組みを見てみましょう。サトウキビ農家が畜産農家に、牛の餌となるサトウキビの葉を譲ります。一方、畜産農家は堆肥となる牛のふんをサトウキビ農家に提供します。お互いが処分に困っていた“やっかいもの”を交換することで、双方がウィンウィンの関係になると考えたのです。
年75万円コスト減の畜産農家も
取材した日、畜産農家の基山さんは、牛の餌を引き取りにサトウキビ農家を訪ねました。
「またあとからもらいに来ますから、よろしくお願いします」と話す基山さんに、サトウキビ農家は「どうぞ、どうぞ」と応じていました。
この日、牛舎に運んだのはサトウキビの葉9ロールで、4日分の餌になるといいます。
牛たちは初め、新しい餌に慣れず食べる量が減ったそうですが、乳酸菌を噴射して十分に発酵させることで、食いつきがよくなるように工夫しました。
この仕組みで、餌代を年間で約75万円抑えることができるといいます。
畜産農家 基山さん
「(サトウキビの葉を)もらって、巻くだけが経費だから、その分だいぶコストは違う」
「外的要因に左右されない畜産を」
鹿児島県はこの取り組みをほかの離島でも広げ、餌の価格の変動に左右されない畜産業と、農業の振興に役立てたいと考えています。
鹿児島県 大島支庁 農政普及課 川越尚樹 課長(当時)
「地域として自立したシステムが確立されれば、外的要因に左右されない畜産経営ができる。循環型農業の確立ができれば、目指していたゴール」
このサトウキビの取り組みのほか、青森県や栃木県などでは、地元の“稲わら”を牛の餌に活用する取り組みが行われています。
(奄美支局 庭本小季)
【2024年5月10日放送】