ソニーグループ新戦略 半導体 世界大手とタッグ

半導体受託生産で世界最大手の台湾の「TSMC」と、ソニーグループなどは、共同で熊本に新工場を建設する計画です。

ソニーはスマホや自動運転車に使う画像センサーで世界シェア1位となっていて、その製造には高度な半導体が欠かせません。画像センサーの生産現場のトップが、その戦略を語りました。

新工場が“隣”にやってくる 570億円を出資

熊本県菊陽町にある新工場の予定地。その隣にソニーの画像センサーの拠点があります。ソニーは新工場に570億円を出資し、200人を派遣する予定です。

「ソニー セミコンダクタ マニュファクチャリング」の山口宜洋社長は、世界的に半導体が不足する中、すぐ隣に進出してくるTSMCから半導体部品を調達できるメリットは大きいと言います。

ソニー セミコンダクタ マニュファクチャリング 山口宜洋社長
「(TSMCは)世界最先端の製造技術を持っている、なくてはならない、今や存在の一つの会社。私たちのビジネスの視点で言うと、安定的な調達が獲得できるんじゃないかということを大きく期待している」

会社が扱っているのが、光を電気信号に変換する画像センサーです。スマホなどに欠かせず、世界シェアはトップを誇ります。その製造には高い技術力を持つTSMCの半導体部品が欠かせないといいます。

タッグで自社の技術力向上を期待

成長分野と見込まれる自動運転では、周りの環境を正確に識別できる高性能な画像センサーが必要です。

従来のセンサーでは正確に識別するのが難しく、トンネルの先が明るすぎたり、信号が点滅して見えたりと、このままでは自動運転のAIが誤認識するおそれがあります。

一方、最新のセンサーでは、明るいところも暗いところも鮮明に見えます。高性能な半導体部品があって初めて、自動運転など新たな成長分野への展開が可能になるといいます。最先端の技術を持つ企業との連携は、自社の技術力の向上にもつながると考えているのです。

山口社長
「いろんな情報の交換、ベンチマーク(品質基準)などができていけば、ファウンドリー(受託生産)としての世界トップレベルのTSMCさんと私たちの事業との差が分かれば、そこを目標にすることができる。いろいろ学ぶこともでてくる」

半導体人材を育成するチャンス

さらに、人材育成の面でも大きな期待を寄せています。TSMCは1700人を雇用する計画で、ソニーグループの山口社長は、育成環境を整えられれば、日本の半導体産業を九州から再び活性化させるチャンスになると考えています。

山口社長
「長期的に人材を育成して、その供給元である大学と連携して、(人材育成の)仕組みを大学、行政も含めてつくる必要がある。今までなかなか半導体事業には振り向いてくれなかったというところに対して、『半導体ってこれからもまだまだ発展する事業じゃないの』『おもしろいんじゃないの』というきっかけを与えてくれたと思う」

TSMCの進出をめぐっては、半導体の確保という経済安全保障上の理由から国も補助を行うことにしています。人材育成や関連企業の成長、そして地域経済の発展にもつながることが期待されます。
(熊本局 記者 馬場健夫)
【2022年5月20日放送】

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