「WTO=世界貿易機関」は、貿易や投資の自由化を推し進めるための国際機関です。スイスのジュネーブに本部があり、164の国と地域が加盟しています。
貿易におけるルールづくりや、紛争を解決する裁判所のような役割も担っています。
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18日に日本を訪れたオコンジョイウェアラ事務局長に、通貨の急激な変動やウクライナ侵攻など世界の貿易を取り巻く課題について、神子田キャスターがインタビューしました。
円安はプラスかマイナスか
まず、円安をはじめ最近の通貨の急激な変動が世界の貿易にどのような影響を及ぼすか、質問しました。
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WTO オコンジョイウェアラ事務局長
「(為替の変動は)将来の不確実性を生みだし、貿易に良い影響を与えることにはならない。普通は、自国の通貨が下がるとその国からの輸出に有利に働く。ただし不確実性や為替の変動がここまで大きいと、どの経済活動にもマイナスに作用する。したがって私は為替が安定することを望む」
神子田キャスター
「円安は日本経済にプラスに作用しますか?それともマイナスですか?」
「一概には言えない。日本だけでなくどの国でも、通貨が大幅に変動すると人々は困難な状況になる。円相場が安定することを私は望む」
オコンジョイウェアラ事務局長の答えは、良い面と悪い面の両面があるということでしょうか。輸出には有利だとしても、為替レートの変動がここまで大きくなると話が違ってくるということでした。
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ウクライナ侵攻は「供給網のぜい弱性」を示した
通貨の急激な変動のほかに世界経済を揺るがしているのが、ロシアのウクライナへの侵攻です。これが世界の貿易体制に一つの教訓を与えたとオコンジョイウェアラ事務局長は話しました。
オコンジョイウェアラ事務局長
「ウクライナとの貿易が妨げられたことで、発展途上国は大きな影響を受けている。例えばアフリカの35の国が食料や肥料を黒海地域(からの輸入)に依存している」
「今回の戦争は(必要なものを調達するための)サプライチェーンのぜい弱性を示した。サプライチェーンを分散化し製造拠点を多様化することで、リスクをより上手に管理できることにつながり、世界経済を強じんなものにできると思う」
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サプライチェーンを巡っては、日本でもマスクや自動車部品などの調達が困難になりました。ウクライナ情勢でも、調達先を分散させることが重要だということを改めて示しました。
世界経済のブロック化「すべての国に損失」
さらに世界経済の大きな懸念材料となっているのが、アメリカと中国の対立を背景とした経済のブロック化です。
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アメリカは、安全保障に関する製品や部品を同盟国などの間で調達する、サプライチェーンのブロック化とも言える動きを示しています。
中国も自前のサプライチェーンをつくって対抗する構えを見せています。
こうした動きは世界経済にマイナスに作用すると、オコンジョイウェアラ事務局長は話しました。
オコンジョイウェアラ事務局長
「WTOのエコノミストがシミュレーションを行ったところ、世界が2つの貿易ブロックに分断された場合、世界の実質GDPが5%減るという結果だった」
「WTO加盟国は自国の安全保障のための措置をとることが認められているが、その措置は一時的であること、対象が限定されること、そして透明性の確保も求められる。世界が複数の貿易ブロックに分断される事態は避けるべきだ。なぜならそれはすべての国に経済的な損失をもたらすからだ」
WTOの前身は「GATT=関税および貿易に関する一般協定」でした。こうした多国間の貿易の枠組みができた背景には、かつて各国が自国の利益ばかり求めて保護主義的な政策を進め、それが第2次世界大戦の一因になったという反省があります。
各国の利害対立を乗り越えて自由な貿易を守っていけるのか。日本も自由貿易を礎に発展してきただけに、今後のオコンジョイウェアラ事務局長の手腕が注目されます。
【2022年10月27日放送】
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