【神子田キャスター解説】「IPEF(アイペフ)」がわかる3つのキーワード

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日本やアメリカ、インド、オーストラリアなど14か国が参加する「IPEF(アイぺフ)=インド太平洋経済枠組み」。初めての対面での閣僚級会合が10日(日本時間)までアメリカ・ロサンゼルスで開かれ、4つの分野で交渉を開始することで合意しました。

IPEFとはどういうものなのか。よく理解するために、参加国の思惑という視点から神子田キャスターが解説します。キーワードは「」「」「」です。
(9月8日放送)

「ま」巻き込む

IPEFはもともと、アメリカのバイデン政権が中国への対抗を念頭に提唱したものです。日米やオーストラリア、韓国などのほか、東南アジア諸国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が加わっています。

このうち日本やオーストラリア、韓国などはアメリカの同盟国です。さらに枠組みを拡大するために東南アジア諸国を巻き込んだ形です。

「い」板挟み

巻き込まれた形になった東南アジア諸国は、アメリカと中国との間で板挟みになっています。

東南アジア諸国としても、IPEFという新たな経済枠組みを通じて巨大な市場であるアメリカとのビジネスが拡大することは魅力です。

一方、中国との対決色を打ち出すアメリカに近づきすぎて、中国から、にらまれたくないというのが本音です。東南アジア諸国は地理的に近い中国との経済関係が年々深まっています。

「ど」同床異夢

IPEFの交渉を成功させるには、東南アジア諸国に対して、枠組みに参加するメリットを示せるかどうかが重要です。

アメリカが離脱した「TPP=環太平洋パートナーシップ協定」の交渉では、アメリカが関税を引き下げることで、東南アジアから輸出を拡大することが期待できるという分かりやすいメリットがありました。

IPEFでも、東南アジア諸国はアメリカとのビジネス拡大につなげる思惑があります。一方、アメリカは中国への対抗が主なねらいで、関税引き下げは協議の対象になっていません。両者は同じベッドで違う夢を見る、いわば“同床異夢”になっています。

IPEFでは半導体など重要な物資のサプライチェーン強化が焦点の一つとなっています。「物資が不足した際、影響を最小限にする体制づくり」を進める方向で検討しているということです。

日本はアメリカと東南アジア諸国との間に立ち、双方を納得させる道を探って交渉を合意に導くことができるのか。重要な役割が期待されています。
【2022年9月8日放送】

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