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これまでの災害で明らかになった数々の課題や教訓。決して忘れることなく、次の災害に生かさなければ「命を守る」ことができません。防災・減災につながる重要な情報が詰まった読み物です。

地震 知識

「人工地震ではありません」災害デマやフェイク、専門家に詳しく聞きました

2022年3月16日、福島県沖を震源に発生したマグニチュード7.4の地震についてSNS上では「人工地震だ」という投稿があり、ツイッターでも一時トレンド入りしました。

こうした「人工地震」に関する投稿、災害デマやフェイクについて専門家に詳しく聞いてみました。

核実験でもエネルギーは足りない

地震のメカニズムに詳しい東京大学地震研究所の古村孝志教授は、地震のエネルギーに注目すると人工地震でないことはすぐわかると指摘します。

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古村教授
「これだけ強い揺れを東北から関東にかけての広い範囲で起こそうと思うととてつもないエネルギーが必要で、例えば核実験でも全然エネルギーは足りません」

過去に北朝鮮が地下核実験を行った際には、地震の規模に換算するとマグニチュード5前後の振動が観測されています。

それに対して今回の地震の規模はマグニチュード7.4。マグニチュードで2の差はエネルギーでは1000倍の差となります。

波形も通常の地震

SNS上では地震波形を持ち出して人工地震だと主張する投稿もあります。

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上の図がSNSで人工地震の根拠として示された地震波形と同じものです。

よく見かける地震波形ではP波という小刻みな揺れのあとS波という大きな揺れがかかれるのに対し、今回はいきなり大きな揺れで始まっているように見える点からそのような主張をしているとみられます。

これについても古村教授は「よくある波形です」と否定します。

古村教授によると、こうした主張をしている人が引用する地震波形のグラフはP波とS波が一体化しているように見えますが、これは時間軸の問題で時間を引き延ばすと印象はかなり変わります。下がその図です。

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さらに今回の地震波形をよく解析に使う「速度波形」という形に変換し時間軸を拡大してみると、下の図のようになってP波、S波がしっかり分かれました。

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古村教授は「よく見てみるとP波もS波もしっかりあります。当然なのですが」と話していました。

(参考)
下の図は2016年9月に北朝鮮が行った核実験の際の加速度波形です。最初から大きな振幅の波形となっています。

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震源の深さまで人間は掘れない

強震動予測に詳しい防災科学技術研究所の藤原広行部門長は「震源の深さ」に注目して人工地震説を否定します。

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藤原部門長
「今回の震源は深さが57キロとされていますが、例えばこれだけ深い場所まで穴を掘ることは今の人類の技術では不可能です」

藤原さんによると、日本で最も深い穴は新潟県で資源探査のために掘られたもので深さはおよそ6300m、つまり6キロほどです。海底の探査を行う地球深部探査船「ちきゅう」が掘削するのも3000m、3キロほどです。世界を見てもロシアやカタールで掘られた12キロが最大級だということです。

またそれだけの穴を掘ろうと思うと予算も数百億円はかかるということです。

発光は「アーク」か

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SNS上では地震発生時の街の映像で白く光る発光現象を取り上げて「人工地震」の証拠だという投稿もありました。

これについて電力システムに詳しい東京電機大学の加藤政一教授に動画を見てもらうと「アーク」という現象だとみられるということでした。

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加藤教授によると「アーク」は地震で揺すぶられた送電線どうしが接触してショートしたあと、送電線がふたたび離れる際に大気中を大量の電気が流れることで起きるということです。

デマにだまされないで リツイートは慎重に

不確かな情報を気軽にリツイートすると、デマを広げることに加担してしまうこともあります。災害が起きると不安な気持ちになりますが、情報収集をする際には公的機関が出す情報を参考に冷静に取り組んでください。



(ネットワーク報道部・藤島新也)


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