Q.ワクチンの効果は?

A.
WHO=世界保健機関がまとめている情報によりますと、イギリスで報告された変異ウイルス「アルファ株」ではファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンの効果には、ほとんど影響しないとしています。

一方、南アフリカで最初に報告された変異ウイルス「ベータ株」や、ブラジルで広がった変異ウイルス「ガンマ株」については、抗体の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があることから、ウイルスの働きを中和して抑える効果が下がるとする研究が出されています。

インドで見つかった変異ウイルスのうち、最も拡大している「デルタ株」に対するワクチンの効果については、WHOはまだ報告が限られているとしながらも、発症を防ぐ効果が下がる影響はファイザーのワクチンとアストラゼネカのワクチンではほとんどないとしているほか、ウイルスの働きを抑える中和抗体の量についてもファイザーのワクチンとモデルナのワクチンでは一定程度下がるものの、十分な量があるとしています。

イギリスで報告のウイルス

WHO=世界保健機関がまとめている情報によりますと、イギリスで報告された変異ウイルス「アルファ株」ではファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンの効果には、ほとんど影響しないとしています。

このうち、ファイザーのワクチンについてはイスラエルで発症を防ぐ効果が94%、感染を防ぐ効果も92%だったなどとする論文が出されていて、分析の対象となった期間にこの変異ウイルスが流行していたことから効果があることが示唆されるとしています。

モデルナのワクチンについて、会社などが医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、細胞の実験ではこの変異ウイルスに対する効果に目立った変化はなかったとしています。

また、アストラゼネカのワクチンについてオックスフォード大学などのグループが医学雑誌「ランセット」に発表した論文によりますと、この変異ウイルスに対するワクチンの有効性は70.4%だったとしています。

南アフリカで報告のウイルス

南アフリカで最初に報告された変異ウイルス「ベータ株」については、抗体の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があることから、ウイルスの働きを中和して抑える効果が下がるとする研究が出されています。

WHOのまとめによりますと、ファイザーのワクチンとモデルナのワクチンについては、抗体の働きを示す値の低下が最小限にとどまるとする研究から、相当程度低下するとした研究まで幅があるとしています。

ファイザーが2021年4月1日に発表したプレスリリースによりますと、南アフリカで行われた臨床試験では、発症を防ぐ効果は100%だったとしたうえで「南アフリカで流行している変異ウイルスに対して高い有効性が見られた」としています。

また、モデルナも細胞の実験で抗体の働きを示す値はおよそ6分の1になったものの、ワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。

一方で、アストラゼネカのワクチンについて、南アフリカの大学などのグループが「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、臨床試験で、この変異ウイルスによる発症を防ぐ効果は10.4%で、効果は見られなかったとしています。

ブラジルで拡大のウイルス

ブラジルで広がった変異ウイルス「ガンマ株」も抗体の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があることから、ウイルスの働きを中和して抑える効果が下がるとする研究が出されています。

WHOのまとめによりますと、ファイザーとモデルナ、アストラゼネカ、それぞれのワクチンについて抗体の働きを示す値の低下は少なかったとする研究から、中程度あったとする研究まで報告されているとしています。

ファイザーは、ワクチンを接種した人の抗体を使った細胞レベルでの実験でウイルスの働きを抑える効果はほぼ変わらなかったとしています。

モデルナは、細胞の実験で抗体の働きを示す値はおよそ3分の1になったものの、ワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。

インドで報告のウイルス

インドで見つかった変異ウイルスのうち、最も拡大している「デルタ株」に対するワクチンの効果について、WHOはまだ報告が限られているとしながらも発症を防ぐ効果が下がる影響はファイザーのワクチンとアストラゼネカのワクチンではほとんどないとしているほか、ウイルスの働きを抑える中和抗体の量についても、ファイザーのワクチンとモデルナのワクチンでは一定程度下がるものの、十分な量があるとしています。

このうち発症を防ぐ効果について、イギリス政府が2021年5月22日に出した報告では、イギリスで確認された変異ウイルス「アルファ株」に対してファイザーのワクチンを2回接種したあとでは93%、アストラゼネカのワクチンを2回接種したあとでは66%だったのに対して、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」に対しては、ファイザーのワクチンは88%、アストラゼネカのワクチンは60%だったということで「2回の接種で十分な効果が得られる」としています。

(2021年6月16日現在)