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Q.「オミクロン株」や「デルタ株」など 変異ウイルス それぞれの特徴は?

A.
WHO=世界保健機関は、主な変異ウイルスを公衆衛生に与える影響の大きさによって、「懸念される変異株=VOC」「注目すべき変異株=VOI」「監視している変異株=VUM」の3段階に分けて国際的な監視体制をとっています。

このうち、「VOC」は感染力が強まる、感染した際の重症度が上がる、それにワクチンの効果が下がるなどの性質の変化が起こったとみられる変異ウイルスで、WHOは国際的に最も警戒するよう呼びかけています。

また、「VOI」は、感染力やワクチンの効果などに影響を与える可能性があり、地域での感染が複数の国で起きるなど、公衆衛生上のリスクになりえるとされる変異ウイルスで、さらに、「VUM」は、影響の度合いがはっきり分からず監視が必要な変異ウイルスに加え、各地での検出が少なくなったVOCやVOIも位置づけられます。

WHOは2021年12月1日現在、「VOC」として5種類、「VOI」として2種類、そして「VUM」として7種類の変異ウイルスを挙げています。

VOC(懸念される変異株)

【オミクロン株】

2021年11月に南アフリカから報告された新しい変異ウイルスについて、WHOは11月26日に「オミクロン株」と名付け、VOCに位置づけました。

オミクロン株は、ウイルスの表面の突起部分で、細胞に侵入する際の足がかりとなる「スパイクたんぱく質」に26から32か所の変異があり、抗体の攻撃を逃れたり、感染力が強くなったりしているおそれがあるとしています。

また、ほかの変異ウイルスに感染した経験があっても、再感染するリスクが高まるおそれがあるとされ、現在、各国の研究機関が感染力や感染した場合に重症化しやすいかどうか、それにワクチンの効果への影響などについて分析、研究を進めています。

【デルタ株】

WHOはインドで最初に見つかった「L452R」という変異がある3種類の変異ウイルスのうち、最も感染が拡大したタイプを「デルタ株」と呼び、「VOC」に位置づけています。

感染力はほかの変異ウイルスよりも強く、感染した場合に入院に至るリスクも高まっている可能性が指摘されていて、世界のほとんどの地域でほぼすべてを占めるに至っています。

日本国内でも2021年夏の感染拡大の第5波以降、ほぼすべてのウイルスがデルタ株に置き換わっています。

ワクチンの効果について、WHOのまとめではファイザーのワクチンではウイルスを中和する効果への影響は無いかもしくは最小限だったという研究結果が示されています。

【アルファ株】

イギリスで見つかった変異ウイルスの「アルファ株」は2020年12月上旬に初めて報告され、その後、世界中に広がりました。

このウイルスには「スパイクたんぱく質」に「N501Y」と呼ばれる変異があり、従来のウイルスに比べて感染力が強く、入院や重症、それに亡くなるリスクも高くなっているということです。

一方で、ファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンの効果には大きな影響はないとしています。

【ベータ株】

2020年5月に南アフリカで最初に見つかった変異ウイルスは、「ベータ株」と呼ばれています。

2020年11月中旬に南アフリカで行われた解析ではほとんどがこの変異ウイルスだったとみられています。

「N501Y」の変異に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」という変異もあることから、ワクチンの効果への影響が懸念されています。

WHOのまとめによりますとファイザーのワクチンとモデルナのワクチンについては、影響は「最小限にとどまる」とする研究から「相当程度低下する」とした研究まで幅があるとしています。

【ガンマ株】

ブラジルで広がった変異ウイルスは「ガンマ株」と呼ばれています。

2021年1月6日、ブラジルから日本に到着した人で最初に検出されました。

ブラジルでは2020年11月のサンプルで確認されていてWHOによりますと、2021年3月、4月の時点ではブラジルで遺伝子を詳しく調べた検体のうち、83%がこの変異ウイルスだったとしています。

南アフリカで確認された「ベータ株」と同様に、「N501Y」に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」の変異もあることが分かっています。

WHOのまとめによりますと、ファイザーとモデルナ、アストラゼネカ、それぞれのワクチンについては、影響は「少なかった」とする研究から「中程度あった」とする研究まで報告されているとしています。

VOI(注目すべき変異株)

「ラムダ株」は南米のペルーで最初に報告された変異ウイルスで、2021年6月14日に「VOI」に位置づけられました。

WHOによりますと特にペルーやチリなど南米で多く報告されていましたが、いずれの国でも減少し、現在はデルタ株が優勢になっています。

感染力やワクチンの効果への影響などについてはまだよく分かっていないということです。

「ミュー株」は2021年1月に南米のコロンビアで初めて報告された変異ウイルスで、2021年8月30日に「VOI」に位置づけられました。

ベータ株やガンマ株と同じ「N501Y」と「E484K」の変異があり、ワクチンなどで得られた免疫の働きが下がるという報告もあります。

南米などで2021年5月から増えていましたが、現在は、デルタ株が多くを占めています。

VUM(監視している変異株)

2021年12月1日現在、VUMは7種類あり、このうちの3種類が以前はVOIに位置づけられていました。

2020年12月にイギリスなどで最初に報告され「イータ株」と呼ばれていた変異ウイルス、2020年11月にアメリカ ニューヨークで見つかった「イオタ株」と呼ばれていた変異ウイルス、2020年10月にインドで見つかった「カッパ株」と呼ばれていた変異ウイルスは、それぞれ2021年9月に「VOI」から「VUM」に位置づけが変更されています。

国立感染症研究所での分類

それぞれの国では各地の実情に合わせて独自に「VOC」や「VOI」、「VUM」となる変異ウイルスを決めています。

日本でも国立感染症研究所が2021年12月1日時点で「VOC」に「ベータ株」と「ガンマ株」、「デルタ株」に加えて、新たに「オミクロン株」の4種類を指定しています。

「VOI」に指定されている変異ウイルスはなく、「VUM」には「アルファ株」「ラムダ株」「ミュー株」以前に「カッパ株」と呼ばれていた変異ウイルス、それにデルタ株にさらに別の変異が加わった「AY.4.2」系統と呼ばれる変異ウイルスの5種類を指定しています。

このうち「AY.4.2」系統の変異ウイルスは、WHOによりますと、2021年10月25日の時点で93.8%はイギリスから報告されているということです。

2021年9月下旬の段階ではイギリスで検出される新型コロナウイルス全体の6%程度がこの系統で、家庭で2次感染する確率がデルタ株に比べてやや高かったものの、家庭以外では差は明確ではなかったということです。

日本国内では、2021年10月28日時点でこの系統のウイルスの検出はないということです。

世界では新型コロナウイルスの遺伝子配列がデータベースに公開されていて新たな変異ウイルスが次々と報告されています。

WHOは各国に対し、ウイルスの広がりを見る調査や戦略的な検査、ゲノム解析などを通じて、対策を強化し続けてほしいとしています。

(2021年12月1日現在)