ウクライナ侵攻2年 ロシア依存を抜け出せないヨーロッパ

ロシアによるクライナ侵攻から24日で2年になります。ヨーロッパ各国はロシア産原油の輸入制限など経済制裁を打ち出してきましたが、エネルギーの分野でロシアに依存せざるをえない現状が浮かび上がってきました

経済制裁の“抜け道”が明らかに

買い物客が行きかうモスクワの商業施設

経済制裁が続くなかで好調とされるロシア経済。その理由の一つが、ヨーロッパの国々がエネルギーのロシア依存から抜け出せないためだと指摘されています。

イギリスのBBC放送は5日、「ウクライナの戦争で制裁が科されているのにもかかわらず、ロシアの原油からつくられた数百万バレルの燃料が、いまだにイギリスに輸入されている」と伝えました。

イギリスは2年前、ロシア産原油の段階的な輸入停止を発表しました。しかしことし2月、その“抜け道”が指摘され、国内で驚きをもって受け止められました。

テムズヘブンにある航空燃料の備蓄施設。世界各国から輸入され、こうした施設に保管されている航空燃料の一部がロシア産の原油からつくられたという調査結果が明らかになったのです

イギリス・テムズヘブンにある航空燃料の備蓄施設

ロシア産原油の“オイルロンダリング” 英NGOが指摘

その調査を行ったのは、ロシア産エネルギーの輸出入を追跡しているNGO「CREA」。ロシアからの原油の輸入が増加しているインドや中国の製油所が大きく関わっているといいます。

調査結果を示すNGOの研究員

NGOによると、インドや中国はロシア産の原油を輸入し精製・加工しますつくられたものはその国の石油製品とみなされるため、イギリスが輸入した際にはロシア産かどうかは分からなくなります

結果として“う回する形での輸入”となることについてイギリス政府は認識しているものの、有効な対策は行っていません。

調査では、こうした石油製品がこの1年で推定6億6000万ユーロ(日本円で約1060億円)に上るとしています。

さらに、ロシア産の原油から製品を生産している12の製油所を特定したとしています。

調査結果にはインドや中国の製油所の名前があがっていた

NGO アナリスト アイザック・レヴィ氏
ロシア産原油から精製された製品を、より安くイギリスに持ち込むために設計された法的な“抜け穴”だ。政府が長く放置すればするほど、ロシアの輸出収入は高くなってしまう

EU LNGを制裁せず

ヨーロッパではLNG=液化天然ガスでもロシアへの依存が続いていますEUはロシア産のLNGについては制裁を科していません

スペインはEUの輸入量全体の4割近くを占めていますが、停止した場合の価格高騰への懸念から継続する姿勢を示しています。

スペイン アルバレス外相
スペインのガス輸入は民間企業によって行われている。スペイン政府がガスの調達先や契約先をコントロールできない

スペインのアルバレス外相

依存脱却には何が必要か

ヨーロッパ各国がロシア依存から抜け出すためには何が必要なのか。専門家は次のように指摘しています。

コロンビア大学 グローバルエネルギー政策センター エドワード・フィッシュマン上席研究員
(ヨーロッパは)アメリカや中東などからLNGの購入をさらに増やすことが必要だ。そして再生可能エネルギーを活用していくことが、ロシア依存から脱却して(調達先を)多様化することに役立つ

エネルギーについては、いまある需要に対してロシア以外の国からの供給が大幅に増えない限りロシアに依存せざるをえない面があると見られます。自国経済への悪影響を避けながら制裁を続けるには一定の限界があるというのが実情のようです。
(モスクワ支局 野田順子、ロンドン支局 松崎浩子、アメリカ総局 江﨑大輔)
【2024年2月22日放送】
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