ウクライナ復興 ヨーロッパ企業が参入

ロシアによる軍事侵攻でウクライナ国内は甚大な被害を受けています。世界銀行の試算によると、ウクライナの復興にかかる費用は4110億ドル、日本円で58兆円余り(8月2日時点)に上ります。

戦闘終結が見通せない今の段階から、ヨーロッパの企業が復興を後押ししようと動き出しています。

がれきを建設資材にリサイクル フランスの建設会社

フランスに本社がある建設会社「ネオエコ ウクライナ」はウクライナの復興支援に新たに参入し、首都キーウの近郊で住宅の再建を担っています。

現地責任者を務めるウクライナ人のビクトリア・シモンさんが、現場を案内してくれました。

住宅再建の現場を案内するビクトリア・シモンさん

建設会社の現地責任者 ビクトリア・シモンさん
「ここにあった建物は大きく壊れていた。私たちはこれらの建物を解体し、すべての材料をリサイクルしている」

この建設会社の強みは、がれきを新たな建設資材にリサイクルする技術です。この技術を使えば、戦争で破壊された建物のがれきを分別することができ、再びコンクリートの基礎資材などとして活用できるといいます。

フランス政府 復興参入に補助金

イギリス・ロンドンで6月下旬に開かれたウクライナの復興を話し合う国際会議では、民間企業の直接投資こそが復興の大きな原動力になるという意見で一致しました。

フランス政府は復興への企業参入を後押ししていて、補助金を積極的に出しています。住宅再建を担っている建設会社も、フランス政府から約7800万円の補助金を受け取りました。

フランス人は渡航に制限があるため、この建設会社の現地子会社で事業を進めるのは、シモンさんら、すべてウクライナ人です。フランスの本社とは定期的にオンライン会議を行っています。

オンライン会議の様子

フランス企業のノウハウを生かし、復興とビジネス拡大の両方を実現する考えです。

建設会社の現地責任者 シモンさん
「ウクライナの復興には何年、何十年もかかるかもしれない。私たちはウクライナを戦前よりもよい国に再建しなければならないことを示したい」

巨額投資「今がタイミング」 アイルランドの建材会社

アイルランドの建材会社「キングスパン」は、ウクライナ国内で大型の投資を計画しています。西部リビウ周辺に430億円余りを投じて建築資材の製造拠点を設けようとしています。

建築資材の製造拠点のイメージ

6月には会社の幹部がウクライナのシュミハリ首相と面会し、ウクライナ政府の支援も受けて事業をスムーズに進めようとしています。

シュミハリ首相(左)と面会する会社幹部

アイルランドの建材会社 プロジェクト責任者 マイク・ステンソンさん
「戦争が終わったら大量の再建事業があることをわれわれは分かっている。(製造拠点の稼働は)戦争の状況に左右されるが、今このタイミングなんだと経営判断した」

こうした外国企業による参画が成功するかどうかは、いかに現地化を図るかや、いかに自分の国の政府によるバックアップを得るかがカギとなりそうです。

ロンドンで開かれた復興を話し合う国際会議には、複数の日本企業が参加したとのことで、日本企業の復興貢献も期待されています。
(ヨーロッパ総局 田村銀河、国際部 後藤祐輔)
【2023年8月3日放送】
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