ウクライナをIT技術で支援

ウクライナ侵攻からまもなく3か月。現地のインターネット復旧やサイバー攻撃監視など、アメリカのIT企業が得意の技術でウクライナを支援する動きが広がっています。

サイバー攻撃監視  米IT企業が支援

ウクライナの副首相がツイートで紹介したのは、衛星アンテナを囲んでスマホを使う市民たちの様子です。アメリカの宇宙開発企業「スペースX」が提供したインターネット接続サービスです。

ロシア軍の攻撃を受けた地域でもアンテナの設置が進んでいます。副首相は、迅速なインフラ復旧に衛星の活用が必要だとしています。

アメリカのIT企業はいま、相次ぎウクライナ支援に乗り出しています。IT大手「グーグル」は、空襲警報が出されるとアンドロイドのスマホに情報を送るサービスを現地で始めました。

サービスを利用しているウクライナ住民の一人は「とても役立つ。サイレンは聞こえない時もあるから」と話します。

ウクライナに対するサイバー攻撃の監視にもアメリカのIT企業が貢献しています。通信大手「シスコシステムズ」は、約600人の従業員がアメリカから遠隔でサイバー攻撃を監視。24時間体制でウクライナの政府機関や金融機関のシステムをチェックし、異変を察知すると、すぐに現地に知らせています。

支援に参加する従業員の一人は「自宅でパソコンがあれば(チェックが)できるし、大がかりな設備は必要ない」としています。

侵攻開始からまもなく3か月。ウクライナはサイバー攻撃の脅威にさらされ続けているといいます。

シスコシステムズ サイバーセキュリティー対策担当 マット・オルニー部門長
「さまざまな種類の攻撃を目にしている。データにアクセスしようという動きが増えている」

現代の戦争は、陸海空の戦いに加え、サイバー攻撃を通じて電力や通信・金融といった重要インフラをマヒさせて社会を混乱に陥れる「ハイブリッド戦争」とも言われます。こうしたなかアメリカのIT企業による支援がウクライナを支えています。

デジタルアートで資金集めるウクライナ政府

ウクライナ政府も資金を集めるためにITを活用しています。3月に「オンラインミュージアム」を開設し、侵攻が始まった日以降の出来事を記したデジタルアートを時系列で展示しています。

例えば侵攻2日目の作品は、チョルノービリ原発をロシア軍が占拠したことを伝えています。

こうした作品の制作を呼びかけたのが、IT起業家でウクライナ政府のデジタル担当官を務めるワレニーナ・パニーナさんです。軍事侵攻後アメリカにやってきました。

さまざまなアーティストから出品された作品は2000点以上に上ります。NFTと呼ばれる技術によってオリジナルだと証明し、作品の価値を高めました。

購入者が世界に一つしかない作品を持てる仕組みにすることで、これまでに約1億円を売り上げました。集まった資金は全額人道的な支援に充てるとしています。

ワレリーナ・パニーナさん
「私たちの目標はウクライナへの関心を高め、支援金を集めて影響力を及ぼすことだ」

(ロサンゼルス支局 記者 山田奈々)
【2022年5月19日放送】