物流網の混乱 “シベリア鉄道”代替ルートの模索

シベリア鉄道は、ロシアのウラジオストクからモスクワまで約9300キロに及ぶ世界最長の鉄道です。日本企業にとっては、ヨーロッパ方面への重要な貨物輸送ルートとして利用が広がっていました。

しかし、ウクライナへの軍事侵攻によって利用を取りやめる企業が相次ぎ、“代替ルート”を模索する動きが出てきています。

脱炭素で鉄道輸送ニーズが高まっていたが…

シベリア鉄道

ヨーロッパに機械部品や住宅資材などを運ぶ物流会社「東洋トランス」はこれまで、シベリア鉄道を利用した輸送に力を入れてきました。シベリア鉄道を使うと、船だけの輸送に比べて日数は1週間以上短縮され、航空便よりもコストを抑えられます。

さらに鉄道は二酸化炭素(CO2)の排出量が比較的少ないというメリットもあります。

この物流会社によると、輸出先のヨーロッパの企業からCO2排出量を厳しく見られる国内企業もあり、鉄道輸送のニーズが高まっているといいます。

シベリア鉄道を使った輸送をこの物流会社に依頼する企業は、2020年には約10社でしたが、21年には約30社に増えていました。

物流会社 髙橋勲 社長
「ヨーロッパは日本よりも脱炭素への取り組みが進んでいるので、排出ガスが少ないルートでお客様は荷物を届けようと。その中の一つが鉄道であると」

軍事侵攻の影響で取りやめたシベリア鉄道の利用

しかし、ウクライナへの軍事侵攻によって安全面などへの懸念が出たため、シベリア鉄道の利用をすべて取りやめざるをえなくなりました。

「かなり期待されていたが、全く先が見えない」と髙橋社長。社内の会議では「残念ながら今の状況ではストップせざるをえないということで、(シベリア鉄道の)ルートが完全に止まっている」と話しました。

代替ルートどうつくる?

この物流会社は、少しでも脱炭素を実現する新たなルートの開拓を迫られています。いま検討しているのは、ルーマニアの港を使うルートです。これまで船舶の輸送はオランダやドイツの港を使っていました。ルーマニアの港を使えば、船で運ぶ距離がより短くなります。

計画ではルーマニアから鉄道を使ってヨーロッパ各地に輸送します。できるだけ鉄道を使うことでCO2の排出量を削減するねらいです。

物流会社 髙橋 社長
「一つ一つのルートをお客様の需要に沿ってつくっていく。とにかくつなぎ合わせていく」

国が新輸送ルート情報を公開 「選択肢を提示」

世界的な物流網の混乱の影響をどう抑えるか、国も動き出しています。民間企業とともに従来の輸送手段に代わる新たなルートを世界規模で開拓。コストや環境への負荷などを検証し、その情報を公開することであらゆる事態に備えてもらおうとしています。

国土交通省 国際物流を担当 大坪弘敏 参事官
「きょう運べたものが、あした確実に運べるという保証はない。できるだけ多くの選択肢を確保し提示しておくことによって、一つの大きな助けになるのではないか」

日本の企業は、ウクライナ情勢のみならず、コロナ禍での物流網の混乱でも大きな影響を受けました。環境に目配りしながらサプライチェーンを守るため、模索が続いています。
(経済部 三好朋花)
【2023年3月28日放送】

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