ベトナム理系人材に熱視線

ベトナムの理系人材を採用して人手不足を改善したい―。製造業の割合が多い滋賀県と、県内の中小企業が人材募集に動き出しています。「ハノイ工科大学」との連携協定を日本の自治体で初めて締結し、ベトナムの学生のインターンシップも実施。企業と行政が一体となった積極的な人材獲得戦略とは?

「中核人材」 ベトナムに求める企業も

ベトナム人社員のゲン・ヴィエット・クオンさん(右)

滋賀県長浜市の資材関連会社で働くベトナム人社員のゲン・ヴィエット・クオンさん(27)は、正社員として採用され2022年8月に来日しました。

ベトナムの大学で学んだ知識を生かし、専門的な設計ソフトを使って製品の設計などを担っています。

ベトナム人社員 ゲン・ヴィエット・クオンさん
「日本での生活と仕事に夢を持っていた。ベトナムと日本の経済発展に貢献したい」

この企業がベトナム人の採用を始めたのは6年前です。販路拡大に向け現地法人を設立することになり、その経営を担ってもらう目的でした。すると「専門性を生かしたい」と考える優秀な人材が続々と応募したため、現地ではなく日本の現場で働いてもらっています。

これまでに10人余りのベトナムの理系人材を採用しました。入社後3か月間は、就業時間中に日本語学校に通ってもらうなど手厚いサポートをしています。

入社後のスケジュール表。就業時間中に「日本語学校」と書かれている

ベトナム理系人材を採用している資材関連会社 森和之 社長
「どんどん人材が減っているので、中核人材をどこで採用するかとなると、今のところベトナムの方が非常に近道」

ベトナムの大学と連携協定 県が人材確保後押し

地元の滋賀県はベトナムの理系人材の確保を後押ししています。県が注目したのは、ベトナム最大の技術系総合大学の「ハノイ工科大学」です。

県は2021年、日本の自治体として初めて大学と連携協定を締結しました。大学で日本語を学ぶ授業を提供したり、現地での就職説明会に県内の企業が参加する費用を補助したりして、ベトナムの学生に県内で働いてもらおうと考えました。

滋賀県 産業ひとづくり推進室 森安弘 室長
「(ベトナムから人材が)安定的に来るようなら企業もたくさん採用しようかな、というふうなサイクルを回していけたら」

インターンシップも開始

県は2023年夏に初めてベトナム人のインターンシップを実施。参加した企業がベトナム人を受け入れました。学生2人は、船や建設用の重機などの部品を製造するメーカーを見学に訪れました。

インターンシップに参加したベトナム人学生
「(日本で)新しい人に会い、働く姿を知ることができて、とてもいい機会」

このメーカーは今後もインターンシップでベトナム人の学生を積極的に受け入れ、採用を増やしたいとしています。

学生を受け入れる鉄鋼部品メーカー 坂口康嗣 社長
「違う環境で学んだ人は発想が私どもと違うので、幅広い人材が集まればいいと思っている」

円安でも日本に来てくれる?

ただ現在は円安です。日本の賃金が目減りする中で、ベトナムから人材を獲得することができるのでしょうか。取材した企業や滋賀県によると、日本企業の高い技術力や、入社してからの面倒見のよさに魅力を感じるベトナムの若い人は多いということです。

日本が選ばれる国であり続けるために、企業は生産性を高めて待遇をよくしていく努力も求められます。
(大津局 光成壮)
【2023年11月22日放送】
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