

企業のグローバル展開が加速する中、外国人材のニーズが高まっています。しかし、ITや経営管理など専門性を持つ外国人の採用が国内外問わず難しくなっているといいます。なぜなのでしょうか?
賃金水準の高さに直面するベンチャー企業
東京都内に本社を置くベンチャー企業「WAmazing」は、外国人向けに日本の観光施設などを紹介するサービスを行っています。オンラインで日本のスキー場のリフト券を買ったり予約したりできるサービスなどです。

この会社では、社員127人のうち約4割が日本に住む外国人です。今後の事業拡大を見越し、ITスキルに加え、海外の言葉や文化に詳しい外国人を新たに採用したいと考えています。

吉野哲仁CTO
「(サイト)改善のタスク(作業)がたくさん、ものすごい数積み上がっている状況で、これをしっかり開発していくためにエンジニアが必要」
吉野さんは、外国人材を紹介する会社を訪ねました。「エンジニアが少し抜けてしまって、その部分の採用を強化したい」と相談すると、人材紹介会社からはITスキルを持つ外国人の賃金水準が年々高くなっていると指摘されました。
外国人材紹介会社 担当者
「ITエンジニアは引っ張りだこ。以前は大体(新人で)350万~450万円といった想定年収だったけれども、最近はオファー金額で言うと相談ベースで400万~600万円といったところが多い」

優秀な人材を獲得するためにどこまで賃金を上げられるか、難しい判断が求められています。
吉野さん
「給与の部分も含めて経営陣でしっかり話し合って対策を考えていかないと、今後の状況も厳しいと思った」

「日本は世界の中で給与の高い国ではない」
ITの知識に加え海外のことも分かる人材の取り合いが起きているのは、日本国内に限ったことではありません。日本企業は海外でも人材の獲得に苦労し始めています。
国際的に人材紹介を行っている会社によると、例えばベトナムで現地のIT専門職の採用を行う場合、日本企業が提示する年収(2020年)は最も高い役員級で「~約610万円」。これに対し欧米系企業の相場では役員級で「~約1530万円」となっていて、2倍以上の差がついています。

なぜこうした差が生じるのか。人材紹介会社「JACリクルートメント」の黒澤敏浩プリンシパルアナリストに聞きました。
黒澤敏浩さん
「日本は世界の中でことさらに給与の高い国では今はない。外国人に相場の給与を出そうとすると、日本人より大幅に高くなる、逆転してしまうケースが頻発する」
「優秀な人材を採用しようとすると必ずしも日本より(外国人材の)給与が安いわけではない。この認識をはじめに持っていただくことが、適切な相場で採用競争に勝っていくために非常に重要なこと」

日本企業はかつて、ものづくりの分野を中心に「現地の人材を安く雇って一から育成していく」というモデルで成功を収めました。しかしそれは過去のものだと発想を切り替える必要があると、黒澤さんは指摘します。
【2022年1月24日放送】