日本のIT人材79万人が不足? インドで始まった人材獲得戦略

日本では2030年までに約79万人のIT人材が不足すると試算されています。

不足を埋めるために企業などがいま注目しているのが、多くのIT人材を輩出しているインドです。世界で人材争奪戦が起きる中、日本勢はどんな戦略で人材を獲得しようとしているのでしょうか。

インドの人材争奪戦 米IT大手も熱視線

世界の企業が注目しているインド。アメリカのIT大手マイクロソフトのインドオフィスは、動画を活用して自社の職場環境のよさをアピール。「わが社は、人材、仕事のやり方、場所に注目し、ハイブリッドな働き方を実現した」などとPRしています。

"地方大学ルート"の開拓ねらうジェトロ

日本勢も独自の戦略を打ち出しています。日本企業にIT人材の情報を提供するジェトロ(JETRO)の担当者は、インドの地方にある「ベロール工科大学」を訪ねました。

ジェトロはこれまで、都市部の有名大学での採用支援に力を入れてきましたが、知名度が高くない地方の大学の開拓を始めています

ベロール工科大学では日本語を学ぶ授業も行われていて、日本で即戦力になるIT人材の採用が期待できるといいます。

大学で行われている日本語の授業
真剣な表情で授業に臨む学生。日本企業での採用につながるか

日本語を学ぶ学生
「日本には他の国にはない好きな文化がたくさんあり、(就職の)きっかけになると思う」

ジェトロは今後、インターンの募集や採用など日本企業が利用できる仕組みをつくろうとしています。

ジェトロ担当者
「外資系企業が足を運んでくれない状態で、日系企業が積極的にこうした(地方の)大学に足を運ぶと、学生は熱心に長期的に働いてくれるんじゃないか」

「家庭訪問」で会社満足度アップ 応募急増の日本のスタートアップ

IT業界は人材の流動性が高いため、企業の中には、採用したあとも会社への満足度を高めてもらうよう工夫を続けているところもあります。

AIを活用したサービスを提供する東京都内のスタートアップ企業「I'mbesideyou」の神谷渉三CEOが大事にしているのが、社員の「家庭訪問」です。会社は社員16人のうち11人が名門インド工科大学出身者です。

取材した日に神谷さんが向かったのは、インドのマチェラという町。8月に入社したばかりのメトゥさんの家庭訪問をしようと、自宅を訪れました。

「ナマステ」。神谷さん(左)が新入社員の家族とあいさつ

神谷さんは、自分たちの会社がどんな会社なのかを家族に説明し、「AI技術を使ってメンタルヘルスの問題を解決する基盤をつくっている」などと話しました。

家族の結びつきが強いインドでは、会社が社員の家族を大切にする姿勢を見せることが、社員が会社を信頼して働いてくれることにつながるといいます。

新入社員のメトゥさん

新入社員のメトゥさん
「きょうはCEOみずから家に来てくれて、私たちの伝統や食事を体験してもらえたし、CEOに両親を会わせることができて、本当にうれしい」

メトゥさんの両親も「幸せです」と笑顔を見せました。

スタートアップ企業 神谷渉三CEO
「そこ(インド)にいる人たちとコミュニケーションをして一緒に時間を過ごして、僕らは何者であるかを知ってもらうことは(会社にとって)すごく大事なこと」

このスタートアップ企業の地道な取り組みは、インドの学生の間で、口コミで広がり、1万人を超える学生の応募が来るようになっているそうです。
(国際部 吉元明訓)
【2023年11月2日放送】
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