東南アジア 不動産市場に流入する海外マネー 背景に何が?

東南アジアでは、中国など海外の投資家からの資金が不動産市場に流れ込んでいて、物件の高騰を招いています。

タイの高級マンション 中国人投資家が熱視線

タイ北部のチェンマイに建設された高級コンドミニアム。物件の価格は高いものでは日本円にして3600万円ほどで、屋上には豪華なプールも設置されています。

この物件は中国人投資家の購入が急増しています。取材した日は、バイヤーの男性が中国人投資家から依頼を受け、スマートフォンの画面越しに物件を下見していました。

画面越しに物件を下見するバイヤー

タイでは、外国人が購入したマンションの部屋数が2023年1月~3月は3800室近くに上り、22年の同じ時期に比べ1.8倍に増加しました。このうち中国人の購入は46%を占め、最も多くなっています。

背景には、中国国内でコロナ禍で経済が減速したことや不動産市場の低迷が続いていることがあるとみられます。

中国人投資家から依頼を受けタイのマンションを下見したバイヤー
「コロナ禍の時から中国人投資家は国内への投資をやめ、海外に投資している。海外への住宅投資、特にタイへの投資は高いリターンが見込める」

この物件を手がけた不動産開発会社の経営者は、今後さらに100億円以上を投じて新たな建設プロジェクトを始める予定です。

不動産開発会社 プリディコーンCEO
「マンションを同じような価格で販売すれば完売するだろう」

シンガポールで家賃急騰 市場過熱に警戒感

一方シンガポールでは、不動産市場の過熱ぶりに警戒感が出ています。不動産会社によると、中国などの外国人がシンガポール中心部で購入した高級物件の数(23年1月~3月)は、この9年余りで最も多くなりました。

ただ、コロナ禍で新たな物件の供給が限られたことで、不動産価格の上昇と家賃の高騰を招いています

IT関連企業に勤め、現地に住んでいる日本人の男性は6月、引っ越すことを決めました。契約更新の際に示される家賃が、これまでの1.6倍に跳ね上がると聞いたといいます。

引っ越しを決めた男性
男性の部屋。家賃が1.6倍に

現地に住む日本人男性
「今回、覚悟をしていた部分はあったが、めちゃくちゃ(家賃が)上がったという感覚はあった。さすがに『ちょっとしんどい』と考えた」

専門家は、こうした状況はしばらく続く可能性があると指摘します。

不動産会社 調査分析担当 クリスティーン・サンさん
「投資家は少なくとも利益が出ると考えている。裕福で高級物件を買うことができるため、長い目で見れば購入を続けるだろう」

中国では従来、投機的な資金が国内の不動産に向かっていましたが、不動産価格の高騰がいきすぎたために政府が規制を強めました。かつてのような値上がりが見込めないとして、こうした資金が海外に向かっているという背景も考えられます。

一方、投資の過熱を招いたシンガポールの政府は4月から、外国人が住宅を購入する際、価格に対して課税される印紙税の税率を、これまでの30%から一気に60%に引き上げて対策を取ろうとしているということです。
(アジア総局 影圭太)
【2023年6月1日放送】

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