中国経済の「3つの難題」 不動産・人口減少・対米関係を解説

中国では10月16日から、5年に一度開かれる共産党の最も重要な会議、党大会が開かれています。中国経済がいま直面する“3つの難題”とは?習近平国家主席は党トップの総書記として、どんな発言をしたのか?神子田キャスターが解説します。

習主席の「危機意識」発言

党大会初日の政治報告で、習主席は党の総書記として国家の発展目標を明らかにしました。

まず「2035年までに社会主義の現代化を基本的に実現」する。これは国民1人当たりのGDPを中程度の先進国の水準に引き上げる内容で、具体的にはポルトガル並みを想定していると言われています。

そして「2049年ごろまでに社会主義現代化強国を建設」する。これはアメリカ並みの経済大国になることを想定していると言われています。

注目は、発展目標を明らかにしたあとに続いた習主席の発言です。

習近平 国家主席
「前途は明るいが、任務は重く道は遠い。危機意識を高めなければならない」

この発言の背景には、緊張する台湾情勢に加えて経済がうまくいっていないことがあります。

2022年は新型コロナの感染防止のため、上海などの主要都市で大規模な行動制限がとられました。4月~6月のGDPの伸び率は0.4%にとどまり、7月~9月も3%程度にとどまるという見方が強く、中国政府が目標に掲げた5.5%程度を大きく下回る見通しです。

難題1 行き詰まる不動産成長モデル

ただ経済が低迷する根本的な要因は、不動産に頼るこれまでの成長モデルが行き詰まっていることがあります。これが1つめの難題です。

どんな成長モデルなのか。中国では土地は国有です。不動産業者は地方政府が整備した用地を、使用権料を払って使わせてもらい、そこにマンションを建てて販売します。
一方、地方政府は、業者から得た使用権料が豊富な財政収入となり、この資金を使って新たに土地を開発します。そこに業者がマンションを建てて販売する構図が繰り返されてきました。

このモデルによって、不動産売買だけでなく内装や家具などの住宅関連需要も拡大し、中国経済が発展する原動力となってきたのです。

ところが、マンション価格の値上がりが続くなか投資用に買う人が増え、価格が一段と高騰しました。庶民からは「高くて手が届かない」と批判が強まりました。

これに対し中国政府は、住宅ローンを借りられる条件を厳しくするなど規制を強化しましたが、その結果これまでのようなマンションの値上がりが見込めなくなり、成長の構図を維持できなくなってきているのです。

難題2 人口の減少

こうした状況を一段と悪化させると言われるのが、2つめの難題、人口の減少です。

中国の人口は14億にまで増え、国連の推計によると2022年から減少に転じます。2100年には7億6600万に減ると予測されています。

長い間一人っ子政策をとっていた影響に加え、最近では、教育費が高く2人めの子どもを持つ経済的な余裕がない人が増えていることや、価値観の多様化でそもそも子どもを持ちたくない人が増えていることがあります。

人口が減れば不動産の需要が減るだけでなく消費も縮小します。さらに、さまざまな産業で必要な労働力も確保できなくなり、成長力が大幅に鈍るおそれが指摘されています。

難題3 アメリカとの対立

3つめの難題はアメリカなど欧米諸国との厳しい対立です。

中国はこれまで、進んだ技術や投資を海外から取り入れる一方、先進各国などへの輸出を通じて急速な発展を遂げてきました。

ところがいま、アメリカ向けの輸出には高額な関税が上乗せされ、最先端の半導体などハイテク製品の調達も安全保障上の理由で制約が加えられています。

習主席は、共産党大会で次のように述べました。

習近平 国家主席
「教育・科学技術・人材は、社会主義現代化国家の戦略的な支柱だ。高い水準の科学技術の『自立自強』を加速させる」

自立自強」ということばが出てきました。自力で先端技術を開発し、生産に必要な高度な部品などを自前で調達できるようにしようということです。実際に中国はいま、先端技術を国家プロジェクトで開発しようとしています。

ただ、あらゆる分野で先進国に追いつくには時間がかかりそうです。その間、成長も鈍ることになります。

それだけに、欧米各国などとの対立がこのまま続くのか、関係改善が図られるのか、どちらになるかで、今後の中国経済の行方が大きく左右されることになりそうです。
【2022年10月21日放送】
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