中国 どうなる?「不動産税」導入

中国の不動産市場は投機的な動きもあり価格の高騰が続いています。中国政府は不動産価格を抑えようと、日本の固定資産税にあたる「不動産税」を試験的に導入する方針を示しましたが、思惑どおりには進んでいないようです。

57平米1億円以上 アモイ・止まらぬ不動産高騰

中国南部・福建省のアモイ。街並みが人気のこの都市は人口の増加が続き、不動産価格が高騰しています。

例えば築17年の中古マンションは、57平方メートルの広さで価格は1億円以上です。

中国ではこうした都市部を中心に不動産市場が過熱しています。対策として中国政府は2021年10月、全国の複数の都市に不動産税を試験的に導入する方針を示し、その後アモイ当局は導入に向け準備を進めると公表しました。

土地の使用権や建物の所有権に税金をかけ、不動産を次々と買い求める動きを抑制するねらいです。

「家は住むものであって投機をするものではない」として、値上がりをねらって家を買う動きを抑えたいということです。

“不動産税は庶民を傷つける”

しかし、不動産税の導入で影響を受けるのは富裕層だけではありません。

アモイでは古くからある住宅地でも、価格が100平方メートルで約9000万円まで高騰。市場価格を基準にすると、高級マンション並みの不動産税が課されるおそれがあるのです。

古くからの住宅地の住民
「(不動産税を)なぜ払う必要があるのか?多くの庶民を傷つけることになる。お金を持っているのは少数派だ」

先行して試験導入した重慶 価格上昇止まらず

それでは、税負担を軽くすればうまくいくのか。実は11年前、内陸部の重慶で不動産税が試験導入されました。課税対象は高級マンションや別荘など一部の高額物件に限られ、税率は0.5%~1.2%と低く抑えられました。その結果不動産税を導入したあとも、不動産価格は2倍に上昇しました。

不動産仲介業者
「(不動産税導入は)影響がなかった。まだ取り引きが多い」

2022年の導入見送りを決定 背景は?

とはいえ、税率を高くすると不動産価格の急落を招くリスクがあります。経済の先行きが不透明になる中、中国政府は22年の不動産税導入を見送ることを決めました

専門家は次のような見方を示しています。

丸紅中国 鈴木貴元 経済調査チーム長
「新型コロナもウクライナ問題もそうだが、いろいろ外部からの圧力がある。不動産市況そのものも悪い中で、不動産税という飲み方を間違えると劇薬になってしまうものを飲むとは考えにくい」

みずから打ち出した不動産税を22年は導入しないと決めた中国政府。背景には、今年は習近平国家主席が共産党トップとして異例の3期目を目指す重要な年で安定が最優先されていることや、そうしたなかで市民の反発が予想される政策が先送りされた面もあると見られます。

住宅の価格が高く庶民には手が届かない状況は、貧富の格差問題にもつながっています。中国政府はすべての人が豊かになる「共同富裕」を目指す方針を打ち出していて、難しいかじ取りを迫られています。
(中国総局 記者 伊賀亮人)
【2022年4月14日放送】