中国ゼロコロナ政策 カギは“時空伴随者”

中国経済の減速がGDP統計でも確認されましたが、その大きな要因の一つが新型コロナの感染を封じ込める「ゼロコロナ政策」です。経済への影響はどうなるのか?そしてカギを握る「時空伴随者」とは何か?解説します。

封鎖の街 レストランは配達もできず

2021年12月に感染者が確認された中国・広東省の東莞(とうかん)市では、複数の地区で封鎖措置がとられました。

周辺にある理髪店やレストランなどは開店休業の状態が半月ほど続き、経営に大きな影響が出たということです。

レストランの経営者

「人流が減って消費もしなくなっている。封鎖されているので配達の注文もとれない」

失敗すれば「世界最大のリスク」 アメリカ調査会社が指摘

こうしたゼロコロナ政策について、国際情勢を分析しているアメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、失敗すれば「今年の世界最大のリスク」になると指摘しました。

その理由について、グループを率いる国際政治学者のイアン・ブレマー氏は次のように説明しています。

「封じ込めに失敗すれば、より大きな感染を引き起こして深刻な都市封鎖を招くことになる」

「世界第2の経済大国で操業停止や供給網の混乱といった問題が生じれば、世界でインフレを招くことになる」

「時空伴随者」の厳しい要件

中国の習近平国家主席は「私は失敗しない」、それだけ厳しい感染対策をとっている、と自信を持っているかもしれません。

そしてこの感染対策の新しいキーワードが「時空伴随者」です。「時間と空間をともにした者」という意味で、感染が確認された人と接触した可能性がある人、日本での「濃厚接触者」に近い言葉です。

どんな人が時空伴随者にあたるのでしょうか。地域ごとに違いがあるようですが、ある地域では「一定の範囲の中に10分以上一緒にいた」、その合計が「過去14日間に30時間以上になった」人が該当します。

この「一定の範囲」は「800メートル四方」とされています。中国当局は、携帯電話の通信記録などを通じて個人がどこにいたか特定しているようで、800メートル四方は特定できる最小範囲のようです。

時空伴随者になると、厳しいケースでは2回PCR検査を行い、陰性が確認されるまで自宅待機を求められることもあったということです。

こうした対策で懸念されるのが経済への影響です。内陸部の西安では21年12月下旬、感染者が250人余り確認された段階で、約1300万人の全市民に外出を厳しく制限する措置がとられました。

「失敗できない」習近平氏の思惑

感染防止と経済の維持が各国共通の悩みとなる中、なぜ中国はこれほど厳しい対策をとるのでしょうか?そこには習近平氏の政治的な思惑があります。

中国では22年2月4日から北京オリンピック・パラリンピックが開かれます。また秋には5年に1度の共産党大会があり、習氏は共産党トップにあたる総書記として異例の3期目を目指しているとされます。

そのためにも、コロナ封じ込めで絶対に「失敗できない」ということかもしれません。

ゼロコロナ政策は失敗してもリスクとなり、うまくいったとしても経済的にはリスク要因になりそうです。

【2022年1月20日放送】