EVシフト加速する東南アジア “リープフロッグ(かえる跳び)”を目指して

世界的に進むEV(電気自動車)シフトが、ラオスやベトナムといった東南アジアの国々にも広がり始めています。

新興国で特定の技術が先進国より速いスピードで進むことを、かえるが跳びこす様子になぞらえて「リープフロッグ(かえる跳び)現象」と言います。東南アジアではEVの分野でこの現象が起きていて、産業の形を大きく変えようとしています。

電気代が安いラオス EVシフト進む

1人当たりのGDP=国内総生産がASEAN10か国の中で8番目となっている、東南アジアの途上国・ラオス。首都ビエンチャンで開かれている自動車の販売会の会場には、世界各国のEVが数多く並んでいました。ラオス政府は2030年に、国内にある自動車の3割をEVにする方針を掲げています。

EVのドライバーに話を聞くと「電気代が高くないのでEVはとても経済的」と話します。

ラオスは豊富な水資源を使った水力発電が全体の7割を占め、周辺国に輸出するほどです。電気の価格も安くなっています。一方、ガソリンは石油を輸入に依存しているため高値が続いています

水資源が豊富で電気代が安いラオス
ガソリンは高騰が続いている

EVはガソリン車と比べて維持費を大幅に減らせることから、EVシフトが徐々に進んでいるのです。

EVを契約した客
「電気を使うことでガソリンよりもかなり節約できている。正しい選択をしたと思っている」

国産EVに力を入れるベトナム アメリカに輸出

ベトナム初の国産EVを製造する工場

急成長する新興国のベトナムは、EVで国の産業を変えようとしています。ベトナム北部の自動車工場では、ベトナム初の国産EVが生産されています。

生産するのは新興メーカー「ビンファスト」。ベトナム最大手の財閥が自動車生産のために立ち上げた新会社で、2022年からEV専業メーカーに転身しました。

ベトナムは縫製業が相次いで進出し成長していますが、人件費の安さに注目した大手メーカーからの下請けが多いのが課題でした。

付加価値の高い工業製品を自国で開発し、完成品までつくることを目指していた中で、EVブームが背中を押しました。EVはエンジン車と比べ部品数が少ないことから新規参入がしやすく、会社の技術力を示すために最適だと考えたとみられます。

自動車メーカーの幹部
「東南アジアでは、私たちが電気自動車を生産する最初のメーカー。ベトナムの経済全般を発展させ、世界におけるベトナムのレベルやポジションを向上させることができる」

このメーカーは23年3月からはアメリカでの販売も始め、受注は国内外合わせて6万台余りです。海外の技術者の採用も進め、今後さらに事業を拡大する計画です。

アメリカ輸出の記念式典の様子

自動車メーカーの生産部門責任者
「私たちはグローバルに展開し、ベトナムで製造された自動車を世界中に届けることで、チャンスをつかみたいと考えている」

東南アジアでは、タイやインドネシアも政府が主導してEVシフトを進めようとしています。こうした成長市場には中国のEVメーカーが先行して入り込んでいて、日本企業も積極的な対応が求められています。
(アジア総局 影圭太、ハノイ支局長 鈴木康太)
【2023年3月23日放送】
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