東南アジアは日本車の販売シェアが高く、“日本メーカーの牙城”とも言われてきました。しかし今、中国メーカーがEV=電気自動車をてこに販売攻勢を強めています。中でもタイでは競争が激化しています。
EVで攻める中国メーカー
タイでは日本の自動車メーカーが9割近い販売シェアを占め、ほぼ独壇場となってきました。
その市場にEVで攻勢をかけているのが中国メーカーです。現地で開かれたモーターショーには、さまざまな種類のEVを展示していました。
タイで2022年のこれまでに販売されたEVは、21年の同じ時期に比べ4倍以上となる8000台余りに上ります。中国メーカーは脱炭素の流れが加速することを見据えていち早くEVを投入し、市場を拡大させています。
特に勢いがあるのが大手の「長城自動車」です。タイでは中国から輸入したEVには関税がかからないため、日本円で400万円を切るモデルも登場しています。
このメーカーは21年にEVを初めて発売し、急速にシェアを伸ばしています。今後は現地生産も行い販売台数を拡大する方針です。
長城自動車 タイ法人 マイケル・チョン ゼネラルマネージャー
「われわれにはタイやASEANでの長期的な戦略がある。将来的には日本メーカーと中国メーカーが共存できるようにしたい」
さまざまな車を開発する日本メーカー
一方、タイでの長い販売実績があるトヨタ自動車は違う戦略を展開しています。12月14日にはバンコクで現地法人設立60周年の式典が開かれ、豊田章男社長は「トヨタとタイの未来は明るい」とあいさつしました。
12月には、現地で人気が高いピックアップトラックのEVの試作車をお披露目。
さらに12月17日には、豊田社長みずからが現地のサーキットで水素エンジン車に乗り込みました。脱炭素の切り札とも言われる水素を活用した車の実用化も目指しています。
アジアのさまざまなニーズに合わせられるよう、多様な車を開発する方針をとっているのです。
メーカーは今後生産する車種の検討に活用していくため、実際の車を使った調査にも乗り出しています。小型EVのほか、ハイブリッド車や燃料電池車など4種類の車をカーシェアリングに提供し、利用者の走行距離や充電時間などを分析しています。
トヨタ自動車 ハオ・ティエン アジア本部長
「トヨタはほかのメーカーとの競争を歓迎している。競争によって、よりよい製品につながっていく」
タイでは政府が経済発展を目指してEVや関連産業の誘致を進めています。これに合わせる形で中国メーカーがEVを投入しているようです。東南アジアで今後も日本車が選ばれるか。この先、数年の動向が重要になりそうです。
(アジア総局 影圭太)
【2022年12月22日放送】
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