アメリカのバイデン政権は温室効果ガス削減のため、EV=電気自動車の促進に大きくかじを切っています。それによって、日本の自動車メーカーが難しい選択を迫られています。
アメリカ EVシフト鮮明
アメリカ・オレゴン州で開かれているEVの普及イベント。地元の環境団体が主催し、ドライバーやメーカーが30台余りのEVを展示して魅力を来場者に伝えました。
参加者の一人は「地球温暖化を防ぐために何かしたいと思っていた。みんながEVを持つべきだと思う」と話します。
イベント主催者によると「(この地域の)EVの登録台数はこの5年で270%増えた」といいます。
バイデン大統領は11日、気候変動対策の会議「COP27」に参加するため、わずか3時間ながらエジプトに滞在しました。「3680億ドルをかけて太陽光発電やEVなどを支援する」などとスピーチし、温暖化対策としてEVの普及を強力に後押しする考えを強調しました。
日本メーカーEVの大部分が税額控除の対象外?
一方、アメリカのEVシフトは日本の自動車メーカーに新たな悩みの種を生んでいます。
バイデン大統領は2022年夏、気候変動対策を進める法律に署名。この中でEVの支援も盛り込みました。しかし、EVを新車で購入した消費者向けの税額控除の仕組みに条件をつけて「車両の最終組み立てが北米(アメリカ・カナダ・メキシコ)で行われていること」としたのです。
ねらいは覇権争いを続ける中国のメーカーの排除にあります。
日本メーカーで、北米地域でEVを生産しているのは現時点では日産のみ。ほかのメーカーは税額控除の対象にならず不利になってしまいます。
日本国内には衝撃が走りました。経済産業省は、控除の対象に日本メーカーも含めるようアメリカ側に要請しています。
広がる?HV新車販売全面禁止の動き
さらに全米有数の自動車市場のカリフォルニア州は、2035年以降、州内で、ガソリン車だけでなくハイブリッド車の新車販売も全面的に禁止する新たな規制案を決めました。ハイブリッド車の販売車種が多い日本メーカーには厳しい規制です。
同様の規制案はすでにニューヨーク州が導入を決定。オレゴン州など多くの州も前向きに検討しているといいます。
オレゴン州環境当局 レイチェル・サカタさん
「15から18の州がカリフォルニアの規制を提案しているか、採用を検討している」
アメリカの政策には、中国メーカー外しに加え、国内に企業を呼び込み雇用を増やしたいというねらいもあります。
さらにEVに使われる電池の原材料も、23年以降は北米などで調達することが税額控除の条件になっていて、日本メーカーにとっては一段と厳しくなります。
EVがこれからどの程度のスピードで普及していくのか、それに対してどのような車種を投入していくのか、市場を読む力が問われることになります。
(ワシントン支局 小田島拓也)
【2022年11月18日放送】
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