産油国UAEでも急速に進むEVシフト その背景は?

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豊富に石油がとれる産油国でも、国内のガソリン小売価格は国際的な市況に影響を受けて上昇しています。それがEV=電気自動車へのシフトを後押ししています。

新車販売の3割がEVの店も

燃費より走りやすさ。中東では砂漠も走れる四輪駆動のガソリン車が長く人気を集めてきました。しかしいま新たに人気を集めているのが、コンパクトなEVです。

UAE=アラブ首長国連邦の車の販売店ではEVの販売が急速に伸び、この半年で新車販売の3割を占めるに至ったといいます。

ディーラーの担当者
「今は3割だが、夏以降EVの売り上げは(新車販売の)5割まで伸びるだろう」

産油国でEVシフトが進む理由は

もともと中東湾岸の産油国は、豊富にとれる石油を少しでも多く輸出に回すために自国での消費を減らそうとしてきました。充電設備に大規模な投資を行うなど、EVシフトに力を入れてきたのです。

加えていまその動きを後押ししているのが、ロシアによるウクライナ侵攻を背景にした国際的な原油価格の高騰です。

6月のガソリン価格は1リットル当たり日本円で約146円。日本より安いとはいえ2021年の同じ時期に比べて70%も上昇しています。

UAEでは公共交通機関が限られ、家庭では複数の車を所有するのが一般的です。都市と都市の間の長距離移動が頻繁で、しゃく熱の暑さでエアコンを強めに使うため燃費も悪くなりがちです。

ある家庭では、毎月のガソリン代が車2台で15万円ほどもかかるようになりました。そこで少しでも節約につなげようと、2台目の車をEVに買い替えました。

EVメーカーが無料の充電サービスを提供していることもあり、月々の負担が減っていると感じています。

車をEVに買い替えた男性
「(EVにすれば)お金は節約できる。これまでの生活習慣を変える必要はない」

UAEのEVメーカー 自社ブランド販売開始

さらなる普及に向けて5月には、首都アブダビでEV専門の見本市も開かれました。

国内のベンチャー企業が中国企業などの協力を得て自社ブランドのEVの販売を開始。知名度で勝る欧米メーカーの高級車に比べて割安な価格をアピールしています。

EVメーカー アザジCEO
「EVに対する意識にどのように変革を起こしシフトさせていくのか。2030年以降ガソリン車が存在することはないだろう」

産油国は、今は原油価格の高騰で輸出では恩恵を受けていますが、中長期的には脱石油、脱化石燃料の時代が来るのは避けられないということで、豊富な資金があるうちに自然エネルギーやEVシフトへの投資をしようとしているようです。

日本の自動車メーカーの現地市場での戦略にも影響しそうです。
(ドバイ支局長 山尾和宏)
【2022年6月16日放送】
 

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