自動車メーカー各社が2022年、EV=電気自動車を相次いで投入しています。その中で、5月に発表された軽自動車サイズのEVは車体価格が239万円、国の補助金を使うと184万円です。100万円台となったEVが普及に弾みをつけるでしょうか。
教訓踏まえ「競争力ある価格設定に」
今回販売される軽自動車サイズのEVは、三菱自動車工業と日産自動車が共同で開発し、同時に売り出します。最大の特徴は2社の協力によって生み出した低コストだということです。
三菱自動車工業 加藤隆雄社長
「普通の軽自動車と遜色ないご負担でお客様に購入いただける」
開発の裏側には三菱が得た教訓がありました。2009年に世界初となる量産型のEVを販売しましたが、1回の距離で走れる距離が短く、価格は460万円でした。補助金を使っても300万円台で販売が伸び悩みました。
新たなEVはこうした経験を生かして開発されました。社内で行われた戦略会議では、担当者が「(今回のEVは)ガソリン車と比べても競争力のある価格設定にする」と話していました。
岡山県倉敷市にある三菱の工場では、日産の車も製造します。ほとんどの部品を共通化して量産することでコストを抑えました。
さらに、ここ数年で電池メーカーの技術レベルが向上しました。電池の大きさは以前とほぼ同じですが、航続距離が180キロに延び、製造コストも下がりました。
マーケティング担当 吉川省吾さん
「反省が払しょくされている車。環境面、商品面、すべてにおいて変わってきている」
「安くなるなら選択肢」だけど…
軽自動車の保有率が高い地方では、このEVをどう見ているのでしょうか。群馬県高崎市で居酒屋を営む古川行男さんは、食材の買い出しや弁当の配達に使う車の購入を検討しています。EVの価格が安くなると聞いて、選択肢に入れています。
取材した日、古川さんは今回販売されるものとは別の車種で、EVに試乗してみました。音が静かなことを実感し、乗り心地には満足して購入への気持ちは強くなりましたが、途中で電池がなくなった時にどう対応すればいいかなど、気がかりもあるといいます。
EV購入を検討している古川行男さん
「渋滞にはまって動かない時にエアコンをかける。そうすると電気は減る。(購入するかは)まだまだ悩んでいる」
メーカーは、今回販売する100万円台のEVでユーザーの反応を確かめながら、次の車の開発にも生かしていきたいと考えています。
三菱自動車工業 加藤社長
「より多くのお客様にお使いいただいて、さらに次のEVに生かしていく。ターニングポイントだったねと言われるような車になる可能性は十分ある」
EV普及の“壁”は越えられるか
国内では、EVの普及に向けた“壁”の存在が指摘されています。「充電設備」で困らないか?1回の充電で走れる「航続距離」は十分か?ガソリン車に比べ「価格」が割高ではないか?といった点です。
今回販売される車は、このうち価格を抑えることで普及の壁を乗り越えようとしています。使う人はどう受け止めるでしょうか。
(経済部 記者 當眞大気)
【2022年5月31日放送】
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