自動運転 一般道での試験走行に密着

自家用車の自動運転について日本では、渋滞中の高速道路などの条件付きですでに一部のメーカーが実用化しています。

一方、一般道での自動運転は信号があったり歩行者がいたりと状況が複雑で、各社はこの分野の技術開発にしのぎを削っています。自動車メーカー「SUBARU」が東京都内の一般道で行った試験走行に初めてカメラが入りました。

AIが道路の形状を推定

取材した日は、このメーカーが開発している実験車両で東京・渋谷周辺の一般道を約10キロ走行。ドライバーはハンドルから手を離しています。アクセルとブレーキも踏んでいません。

フロントガラスの上部に付けられた2台のカメラで前方を広範囲に撮影し、その映像を車に搭載されたAI=人工知能が解析。前方の車との距離や地図情報、GPSなどと組み合わせて自動で走行しています。

自動車メーカー 田村悠一郎さん
「ハンドルに手は添えているが、システムのほうでかなりアシストをしているので、車のほうで判断して制御が動いている状態」

一般道の自動運転は、AIの精度の高さが欠かせません。

これまでのシステムでは、映像から路上に引かれた「白線」を認識して道路の形状を割り出していました。しかし、一般道では場所によって白線が消えかけていたり、路肩や交差点で途切れたりしています。

このメーカーは今、白線がないところでもAIが自動で推定する技術を開発しています。より多くの映像を学習させて精度を高めようとしています。

自動車メーカー 田村さん
「まだまだ(AIが)未対応な部分、難しい道路もあり、情報を広くとりながら技術を進化させていきたい」

AI技術者の獲得に力 電機・ITなどから転職も

自動運転のカギを握るAI。その技術者の獲得に向けて体制も強化しています。この自動車メーカーは、IT企業が集まる東京・渋谷に開発の拠点を設け、数十人規模の専門チームをつくりました。

電機メーカーやIT企業などから技術者の転職が相次いでいます。AI技術者の一人は元電機メーカー社員で、2022年2月に入社しました。「車の技術とは違った今までの自分の経験が、自動車の技術開発に役立てられればいい」と話しました。

この自動車メーカーは2030年ごろをめどに、こうした技術を順次、一般道に導入していきたいとしています。

自動車メーカー 田村さん
「お客様の運転を助けるための自動運転技術であり、その力でお客様の安全と快適を担保していきたいと考えている」

自動運転を巡っては、アメリカで無人で走る配車サービスが一部で実用化される一方、自動運転車で死亡事故も起きています。

こうした中、日本メーカー各社は無人運転よりも自動運転でドライバーの負担を減らし、事故を減らすことに力を注いでいます。
(経済部 記者 樽野章)
【2022年7月26日放送】