

障害者の雇用は、働く人の数は増えていますが、給与の平均は健常者と開きがあるのが現状です。もっと充実したキャリアを築けるようにしたいと、スタートアップ企業が障害者専用のキャリア開発スクールを始めました。
「雇う、雇われる」をゴールにしない キャリア開発スクール立ち上げ
東京のスタートアップ企業「RESTA」の松川力也社長は2月、念願だった、障害者のためのオンラインスクールを立ち上げました。目的は、スキルアップによって障害者の収入を増やすことです。

松川さんは14歳の時に脳内出血を起こし、左半身にまひが残りました。将来自分が就ける仕事は限られているように感じたといいます。
松川さんはその後、もっと障害者の可能性を広げたいと、就労支援に携わることを決意します。2年をかけて企業や社会福祉の関係者などにヒアリングを続けた結果、感じたのは、障害者は簡単な業務を担っているケースが多いことでした。
スタートアップ企業 松川力也 社長
「障害者の雇用はどうしても、雇うこととか雇われることがゴールになっていると考えていて、当たり前の評価を当たり前に受けられる社会をつくりたい」
スキル身につけ収入増を目指す受講生
このオンラインスクールで学び、キャリアアップを目指す受講生の一人、大川颯さんは4年前に脊髄を損傷しました。それまでの美容師から事務職に転職したものの、満足できる収入は得られていません。今は少しでも収入を増やすことが目標です。

オンラインスクール受講生 大川颯さん
「しっかり自分自身でスキルを身につけて仕事ができる、ということがしたかった」
障害者の課題に対応したプログラム
スクールでは、基本的なビジネスマナーのほか、障害者の課題に対応したプログラムを用意しています。
例えば、外出しにくい人もリモートワークで働けるようにするための「ITリテラシー」や、行動範囲が狭まりがちな「習慣」を変えるための意識の持ち方も学びます。

受講生それぞれの強みや弱みを分析してアドバイスし、即戦力を育てるのが目標です。
受講生とオンラインでの面談も行われます。取材した日、社長の松川さんはオンラインで受講生の大川さんと面談し、転職活動で最も大切な「マインドセット」について伝えました。目標を定めて一つ一つ達成していくことです。


「できることを明確にすればスキルが伸びていく」
受講生の大川さんは、スキルを身につけることで自信を持って就職活動にあたることができると感じています。
受講生 大川さん
「年収を上げて就職するのが目標だと思うけど、そういうところだけでなく、生き方とか『どうやって生きたら楽しいだろう』とか。自分が魅力に感じることを仕事にしていきたい」
松川社長
「障害がある人も、自分のできることを明確にすれば絶対スキルが伸びていくと思っていて、そういう社会とか、そういう世界観をつくっていきたい」
松川さんは、障害の有無に関係なく一人一人が持つ能力で雇用される社会になってほしい、そのロールモデルをつくっていきたいと話していました。
(国際放送局 照井隆文)
【2023年5月24日放送】
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