手厚い待遇に昇進も!?アメリカ 過熱する人材獲得競争

アメリカでは、失業率が3%台半ばと歴史的に低い水準が続き、人手不足が深刻になっています。民間企業に加えて、警察や軍隊も、人材確保に向け異例の対応策に踏み出しています。

あごひげなど解禁 規則見直したオハイオ州の警察署

オハイオ州のミドルタウン警察署では、以前は採用試験に数百人の応募がありましたが、2023年は2月までにわずか4人でした。

深刻な人手不足を受け就業規則の見直しに踏み切りました。これまで腕のタトゥー(入れ墨)を市民に見せることや、あごひげを生やすことを禁止していましたが、若者が応募しやすいよう解禁したのです。

規制を見直したあと、タトゥーを入れた警察官を新たに2人採用できたといいます。

あごひげを生やし、タトゥーも入れている男性警察官は「(タトゥーによって)制服を着ていても個性を出すことができる」と話します。

ミドルタウン警察署 デービッド・バーク署長
「大きな決断だった。若者たちはタトゥーが大好きだ。見直しによって採用の扉が開かれた」

入隊すれば人材を紹介した兵士が昇進 陸軍が異例の制度を導入

軍隊も人材確保に苦労しています。国防総省は3月、入隊を呼びかける映像を新たに公開しました。

陸軍の入隊資格は、厳しい体力テストをクリアできる35歳までで、人材は民間企業などとの奪い合いになっています。

このため23年に導入したのが入隊希望者を兵士が紹介する制度です。その希望者が実際に入隊すれば、紹介した兵士が昇進するという異例の制度で、例えば「E-1(二等兵)」が紹介した場合、入隊後60日以内に一等兵に昇進するといいます。

この制度を導入してからわずか6週間で50人以上が入隊しました。

陸軍 ダフニー・デービス 准将
「多くの前向きな結果が生まれている。誰がより多くの兵士を紹介できるか、隊の中で競争のようにもなっている」

美容院や高級レストラン約130万円分 手厚い福利厚生

民間企業では、社員の離職を防ぐ手厚い対応に乗り出すところも出てきています。首都ワシントンを中心に14の店舗を展開するレストランチェーン「KNEAD」の女性社員はある日、仕事を終えて美容院に向かいました。会社の福利厚生の一環で、無料でお気に入りのスタイリストにカットしてもらえます。

ほかにも、高級レストランでの食事や洋服の購入など、仕事にもつながるサービスを年間約130万円分利用できます

この女性社員は「とてもいいこと。大切にされていると感じ、モチベーションが上がる」と話します。

会社にとっては年間1億円以上の負担となりますが、魅力的な待遇で人材の流出を防ぎたいと考えています。

レストランチェーン創業者 ジェイソン・ベリーさん
「従業員がいなければ事業はできない。大切にすることで離職はなくなるだろう」

アメリカでは人材の獲得競争の激化で人件費が上昇し、物価の高騰を招く要因ともなっています。

日本でもバブルのころ、警察官のなり手が不足して人材獲得競争が激しくなったことがあります。これから再びそうした状況がやってくるかもしれません。
(ワシントン支局 小田島拓也)
【2023年3月30日放送】
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