記録的なインフレが続いているアメリカ その実態と影響は?

アメリカでは、4月の消費者物価指数が8.3%の上昇となるなど記録的なインフレが続いています。家計や企業はどのような影響を受けているのでしょうか。

目に見えにくいインフレ 「シュリンクフレーション」

アメリカ東部・ペンシルベニア州に住む主婦のステファニー・レインさんは、夫と4人の子どもがいます。夫の収入だけで家計をやりくりしていて、さまざまなモノの値上がりが重い負担になっています。

さらに今感じているのが、目に見えにくいインフレです。スーパーに買い物に来たレインさん。トイレットペーパーを手に「1ロール当たりの大きさが小さくなった」と話し、食品売り場では「ピザは2枚買わないと家族に行き届かなくなった」と嘆きました。

この現象は、縮むという意味の「シュリンク」「インフレーション」を掛け合わせて「シュリンクフレーション」と呼ばれ、インターネットの掲示板で大きな話題になっています。

日本では、レーダーに見つからないステルス戦闘機になぞらえて「ステルス値上げ」とも言われています。

アメリカでは、実は値上げされていることを周知するためのアプリが登場しました。市民の間で情報が共有されるようになりました。

インフレはアメリカの1か月の家計支出を2021年より約4万円も増加させたとも言われ、生活防衛に走る人も増えています。

レインさんはスーパーへ行く回数を減らし、無償で食品を受け取ることができるフードバンクを利用するようになりました。

主婦 ステファニー・レインさん
「もう限界です。これ以上何を削れるか分からない」

船の燃料費2倍→魚の仕入れ値上昇

ビジネスの現場も厳しさが増しています。サンフランシスコで営業するシーフードの卸売業者は、仕入れ値の値上がりに苦しんでいます。

漁船の燃料費が2倍になったことから漁に出るのを控える漁師が増え、魚の流通量が減っているのです。

卸売業者はコスト削減に努めているものの、最大30%値上げせざるをえず、売り上げに響かないか不安を抱えています。

シーフード卸売業 ヘンリー・イチノセCEO
「低価格で仕入れるよう努力しているが、私にはどうにもならない状況」

倉庫賃料が3倍近くに

倉庫を利用する企業にも影響が出ています。フロリダ州でイベント設営会社を経営するトム・ウィズナーさんは、倉庫の退去を余儀なくされたといいます。人件費の高騰で倉庫の建設が進まず、賃料が3倍近くになったためです。

賃料が安い倉庫を探した結果、離れた3か所に分けて機材を保管することになりました。搬入に時間がかかるようになったため、仕事を断らざるをえない時もあるといいます。

イベント設営会社 トム・ウィズナー代表
「こんなに大変なことはなかった。54年間で初めてだ」

アメリカでは世論調査で「インフレが大きな問題だ」と答えた人が70%と多くなっていて、22年秋の中間選挙でもインフレ対策が最大の焦点の一つになっています。
(ロサンゼルス支局 記者 山田奈々)
【2022年6月2日放送】

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