リチウムラッシュのアメリカ “中国依存”脱却なるか

脱炭素で市場の急拡大が見込まれるEV=電気自動車には、蓄電池が欠かせません。

蓄電池の重要な原料である「リチウム」は、中国が生産量の13%を占めて世界第3位、さらに鉱石からリチウムを取り出す精錬という工程では58%を握っています。

中国との覇権争いを繰り広げるバイデン政権は今、中国依存を脱却しリチウムを自国で生み出そうと強化策を打ち出しています。

「白いダイヤ」アメリカ国内生産は衰退したが…

カリフォルニア州サンディエゴでのバッテリーの展示会には、世界的にEVの普及が進む中、これまでで最も多い100社余りの企業が参加し、多くの来場者が詰めかけました。

担当者
「私たちは蓄電池材料の生産をアメリカに回帰させ、世界の蓄電池材料の供給網を変え、再構築できると信じている」

蓄電池に欠かせないリチウムは、その希少性から「白いダイヤ」とも言われています。

戦後は長くアメリカが世界最大の生産国でしたが、その後、安い労働コストで中国などが台頭し、アメリカの国内生産は衰退しました。

かつては世界最大の生産国だった

中国依存脱却へ 自国回帰進める

中国と対立するバイデン政権は蓄電池産業の自国回帰を図ろうと、EVを購入する人に多額の税額控除策を導入。

その条件として、リチウムなど重要な原料の調達や加工をアメリカやFTA=自由貿易協定の締結国で行うことが定められています。露骨な“中国外し”を進めているのです。

EVに乗るバイデン大統領

始まった開発ラッシュ

バイデン政権の方針を受けてアメリカでは、リチウムを巡る巨大プロジェクトが次々と動き出しています。

廃坑となっていた鉱山でも生産再開を目指す

アメリカ国内で唯一稼働しているネバダ州の鉱山を手がける、世界最大規模の企業「アルベマール」は、廃坑となっていたノースカロライナ州の鉱山でも事業調査を始めました。4年後の生産開始を目指しています。

将来的には年間10万トン、EV160万台分のリチウムを供給する計画です。

リチウム部門トップ エリック・ノリス氏
「再生可能エネルギーへの転換というかつてない時代に直面し、リチウムは極めて重要な役割を果たしている。アメリカ政府の法律は有望なもので、アメリカ産業の飛躍につながる」

精錬も自国で

別の資源会社「リチウムアメリカズ」は2022年7月、ネバダ州で精錬技術の研究センターを開設しました。

精錬技術の研究センターの内部

ティム・クロウリー副社長は「リチウムの鉱石は軟らかく、ほとんどが粘土でできている。その中から早く取り出すことが重要」と説明します。

中国が6割近くを握る精錬もアメリカ国内で手がけることで、サプライチェーンの強化につなげる考えです。

ティム・クロウリー副社長
「リチウムをアメリカ国内で調達できるようにすることが不可欠であり、バイデン政権がまさにそれを支援し、私たちは実践している」

日本政府も、海外の鉱山権益の確保や有志国からの資源調達を後押ししようとしていて、蓄電池を巡る争奪戦は一層激しくなりそうです。
(ワシントン支局 小田島拓也)
【2023年1月19日放送】
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