リチウム開発に沸くアルゼンチン 電池の需要増で現場は

電気自動車(EV)やスマートフォンの蓄電池などの原料になる「リチウム」

推定埋蔵量世界2位のアルゼンチンには炭酸リチウムの生産拠点として世界各国から企業が進出しています。開発に沸く地元では歓迎の声が上がる一方で、環境への懸念も出ています。

塩湖の地下に眠るリチウム

アンデス山脈の各地にある「塩湖」。地面が塩で覆われた大地の下にはリチウムを含んだ水があり、膨大な量のリチウムが眠っています。

リチウムは南米ボリビア、アルゼンチン、チリの3か国に、世界の推定埋蔵量の60%が集中しています。

日本の商社 生産倍増を計画

アルゼンチンでは2010年から、他国に先駆けて日本の商社「豊田通商」がリチウム開発に取り組んでいます。

日本の商社の開発現場

塩湖の地下から水をくみ上げたあと約1年かけて蒸発させ、炭酸リチウムを精製します。

豊田通商アルゼンチン 須藤俊佑 マネージャー
「1キロ強の1袋で、今1万円程度の価格です。電気自動車の時代がやってくることをもう10年以上前から見据えて、現場で働こうと」

この商社では高まる電池需要を受けて、早ければ年内にも生産量を倍増する計画です。

国を挙げて開発に力

アルゼンチン政府も、リチウム開発を経済立て直しの柱にしようと力を入れ始めています。激しいインフレや通貨の急落などで経済の悪化が続いているためです。

アルゼンチン マッサ経済相
「アルゼンチンには(リチウム開発の)主導権を握るチャンスがある」

開発競争が加速 住民は賛否

開発現場の近隣では、過熱するリチウム開発に対し住民の意見が分かれていました。

施設が新設された集落を案内する住民の男性

近隣住民の男性は、進出したリチウム関連企業の支援で集落の施設が次々に新設され、雇用も生まれていると話します。

近隣住民の男性
「リチウム開発が進めば、このコミュニティーも成長する。世界に電気自動車が普及することにネガティブな要素は何もない」

塩湖に立つ「リチウム反対」の看板

一方、観光業や塩の販売で生計を立てている地元の人たちからは、大量の地下水をくみ上げることで生活が脅かされるという不安の声も出ています。地元の環境団体は周辺の環境に配慮した開発をすべきだと指摘します。

環境団体「FARN」環境政策部門 ピア・マルケジャニ代表
「少ない水でリチウムを抽出できる技術もある。自分たちの利益のために環境を破壊するようなことがあってはならない」

アルゼンチンのリチウム開発を巡っては最近、中国企業の進出も加速していて、資源開発と環境への配慮のバランスをどうとるかも今後の課題となります。
(サンパウロ支局 記者 木村隆介)
【2022年9月15日放送】
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